井戸の中の女神
初出:べったー/2018-09-11

パラレル



カミュは今、井戸の中にいる。

ソルティコから男の後を付けてきた結果ここにたどり着いたのだ。
なんでそんなことをしたのかと言えば、「井戸の中の女神」に会うためだ。

この土地へ来る間の連絡船の中でも耳にした、"女神"の噂。
それは至高の時間だという。
どうやら、本番は禁止だが、とてつもないテクニックで昇天させてくれるらしい。
しかもそこらへんの娼婦とくらべものにならない程美しいとか。
町で営業できず、外でひっそりと客を待っているというのだ。

そこで、怪しい動きの男を追ってきたというわけだ。
その男は娼婦の客引きを断り、一目散に、しかし周囲を警戒しながらやってきた。
ここがその"女神"の住む井戸というので間違いないだろう。

井戸の中はすこし肌寒く、そして広い。分岐がある。
夜目の利くカミュにとっては造作もない暗さだ。
男と充分距離を取って、ゆっくりと追う。

男は行き止まりについたのだろう、立ち止まった。
男の持つ篝火に、小さな小屋が照らされた。

まさか女神が作ったとは思えない。
有事の際に避難するために町の人が作ったのだろうか、生活感はなく、色々と痛んでいる。
お蔭で中を覗くことが出来そうだ。

男がノックをして入っていったのを見計らって、カミュは足音を殺しながらソロソロと小屋に覗けそうな隙間を探った。

少し広めの隙間を見つけて中を覗き込む。
中は見た目よりは清潔そうだ。暖かそうな灯りがみえる。

ドアを入ったばかりの男が浮ついた声を出し、女神を呼んだ。
すると奥から美しい髪の少年が出て来た。

女神とばかりいうので、女だと思っていたが、少年だったとは。
しかしカミュはそう落胆していなかった。

「(あんなに綺麗な男が居るとか、信じらんねえ。)」

少年は、そこらへんの村を駆け回っているような少年とは似ても似つかない。
透き通るような肌、輝く髪、美しい瞳。
遠目からでも、まるで聖職者のような清廉さがあるように感じられた。
少なくとも上等な技を持っているようには見えない。

男は鼻の下を伸ばしながら少年に誘われるまま椅子に座った。
少年はドアを開け表の看板を直してから男の前に向かって行った。

カミュはそこまで見届けて、表戸へ戻る。
少年はまだしも、おっさんの昇天声なんぞ聞きたくはない。

先ほど男が居たせいで見られなかったのだが、『現在使用中』なる看板がかかっていた。
少年が直したのはこれらしい。
裏面を見ると『営業中』と書いてあった。

カミュは隠れて待つことにした。

本当は姿を見ればそれでいいとおもっていたのだが、
あの姿を見てしまえば、話くらいしたいと思うのはしょうがないだろう。


15分もせずに、男は出て来た。
その顔は大変晴れやかだった。

幸い次の客は来ていない。
カミュは看板が『ようこそ』になるのをドアの前で待っていた。

そう待たずに足音が聞こえ、ドアが開いた。

「あ、」

覗き込んだ少年の目と見つめ合う。

「今日はもうしまいか?」
「ううん。ごめんね、お待たせした?」
「いや。じゃまするぜ?」
「どうぞ。」

少年は看板を直す間もなく、カミュを室内へ誘った。

案内された室内は暖かい。
これなら下半身を晒しても大丈夫だろう。

「今日は来てくれてありがとう。…初めてだよね?
「ああ。」
「よかった、こんなにかっこいいお兄さんを忘れてたわけじゃなかった。」
「一見少ないのか?」
「最近は常連のお兄さんが多いから。」
「まぁこんな辺鄙なとこじゃな。」

カミュはあたりを見渡すフリをしながら少年を観察した。

薄手で少し長めのシャツから、チラリと生地が少な目の下着が見える。
背は結構高く、線は細い。

「お兄さんはどこで僕のことを?」
「町で噂になってたからな。」
「町で?どうしよう、また怒られちゃうかな…」

少年はタオルを濡らしながらぼやいている。

「町でなんかあったのか?」
「前は町でやってたんだけど、同業の皆さんに怒られちゃって…。『本番ナシで半額はだめだ』って。」
「そんなのどうせ自分たちの客が減るからだろ。本番ナシの方が人数とれるからな。」

さっき立ち寄った港で見た同業者達よりはよほど可愛いし、これで半額なら選ぶに決まっている。

「けど、こんな所にも来て貰えて嬉しいんだ。」
「この隠れ家っぽい感じも結構人気なのかもしれないぜ?」
「そうだといいな。偶然見つけただけなんだけどね。」

少年は両手にタオルを持ってカミュの前までやってきてしゃがみ込んだ。

「あの、改めてお話しすると、僕は本番ナシです。お口だけで気持ちよくするだけだよ?」
「解ってる。」

ふっと少年は笑った。

「(可愛い…)」

子どもらしくて可愛いとか、愛嬌があるとかそういうだけではない可愛さだった。
どこか女性らしくもあり、しかし媚びても居ない。
その可愛さに惹かれた。

「あの、脱がしてもいいですか?それとも自分で脱ぐ?」
「自分で脱ぐぜ?」
「うん。」

ズボンの紐を解き、下着も一緒に下ろし、再び腰かけた。
少し長めの上着のせいで隠れてしまうので、捲ってみせる。
まだ流石に立ってはいないが、水色の幼い視線に硬くなり始める。

少年はタオルを近くの机に置いて、椅子に座るカミュの前にしゃがみ込んだ。

「それじゃあ…改めまして。今夜はよろしくね?」
「ああ。」
「いっぱい気持ちよくしてあげる。痛かったりしたら言ってね。」


至高の時間が始まった。


「じゃあまずは、…タオルで綺麗にするね。熱くない?」

タオルを差し出されて触る。程よく暖かい。
「ああ、大丈夫だ。」
「じゃあ、ふきふきするね。」

少年はしゃがみ、カミュの雄を優しく持ち上げて、温かいタオルで拭い始める。
白いタオルから亀頭だけが見えているのは何だかとてもいやらしい。
しかも拭うその指は細く長くとても美しく、武器など持ったことがないと思われた。

至って真面目に拭いているのがまた何だか魅惑的で、そのまだ少し幼い顔を歪ませてやりたくなる。

陰嚢までしっかりと一通り拭き終えると、膝立ちで見上げてくる。
「あの…口しても、大丈夫?舐めちゃ嫌な所とか、ある?」
「特にないぜ?しっかりイかせてくれよ。」
「がんばります。」

タオルで竿を包まれているカミュのペニスにそっとキスをする。
それからタオルをとって、美しい指でそっとカミュのペニスを持ち上げて、焦らすようにゆっくりと口にくわえた。

カサの部分をチロチロと舐めてから、鈴口や亀頭に舌を這わせる。
裏筋に吸い付き、竿を舐め上げる。
ゆっくりと優しくそんなことをされ続けて、立たない男はいないだろう。
硬くなり始めると、今度は小さな口で亀頭を咥えこむ。
ぱっと見よりも広がる口は熱く、柔らかい。

じゅぼじゅぼとあえて音を立て、責めたててくる。
半分ほどまで咥えて、口を窄めて絞りだそうとする。

「ッ…!」

この見た目とこのテクニックだ。
こんなのイくに決まってる。

カミュのモノもどんどん質量を増す。
少し苦しそうに眉を顰めているのもまた興奮する。

うぐ、と苦しそうな声を上げて、ペニスを引き抜くと、涎がどろりと糸を引いた。
多分先走りも相当量混ざっているだろう。

「ふぁ…おっきぃ…お兄さんの、すごくおっきいんだね。やっぱり自慢?」
「自慢する相手がいねぇけどな。」
「本当に?」
「そんなに軽い男に見えるか?結構硬派なんだぜ?」
「女の子に人気ありそうだから以外かも。僕のところに来るなんて…物好き?」
「まぁな。」

白い指が奥にふれる。

「ここも舐めていい?」
「いいぜ?」
「それじゃあ…」

イレブンは舌を伸ばしながら、そっと口を近づけ、陰嚢を舐める。
柔らかく、しかりザラリとした感覚にゾワゾワする。

巧い娼婦なら山ほどいるだろう。だが、この幼さと清楚さが癖になりそうだ。

陰部を全体的に舌で愛撫して、目で許しを請う。

「搾り取っていいぜ?たっぷりイかせてくれよ?」
「うん。」

少年は再び亀頭を飲み込んで、竿まで銜え込む。

頬を窄ませ、じゅぽじゅぽとあえて音を立てる。
咥内とカリが擦れて気持ちがイイし、苦しいだろうに眉を顰めず喉近くまで深く咥えこんでくるのも流石だった。

見た目の可愛さ、純朴そうな指先に違わぬ技巧、幼さの残る小さな口の穢れていく様、
カミュは与えられる快感とそれらすべてに煽られるように、高まる。昂じる。

「ッ…!」

じゅぽじゅぽ
くちゅくちゅ

唇から溢れ出す透明のドロリとしたものが増える。

「そろそろ…」
「んっ、だしていいよ…!

半分銜えたまま応えてにっこりと笑う。

「ッ、あ…!やべ、」

思わず美し髪に触れた。
それは見た目違わず絹のように美しく、ふわりと良い香りがして、余計に高まった。

美しいものを穢している。

元盗賊はそれに激しく興奮を覚えた。

じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ

精液で女神の口を満たしてやりたい。
そんな欲望がむくむくと湧きあがった瞬間。

カミュは、あっさりと吐精した。

びゅるるッと、注がれる。

さっきの枯れ始めた客とは違う、まだ若く雄々しい精液は、
カミュの望むままに少年の小さな口内を満たした。


暫く苦しそうにもごもごとしていたが、精液の付いた舌をチラリと見せてから、
ごくん、と飲み込んだ。

「んッ…うわぁ、すごく、いっぱいでちゃったね。」
「苦しくないか?」
「え?」
「え、いや、結構濃いだろうし…」
「平気だよ。慣れてるから。…男娼の心配するなんて、珍しいね。」
「え、まぁ…」

さっきはあんなに歪ませてやりたいと思っていたのに、今は何となく違う。
もっとも吐精後の良くある賢者モードなのかもしれないが。

カミュはこの少年と愛し合いたいと思った。
それは体という意味は勿論のこと、彼の心配を一身に受けたかった。

この大事な至高の時間、精の発散だけ終わるのは嫌だった。

「そうだ、名前は?」
「え?イレブンっていうんだ。」
「イレブン…俺はカミュだ。」
「カミュ…覚えておくね。」

少年は片づけを始めようと立ち上がったのだが、カミュもまた立ち上がり、その腰をぐっと引き寄せた。

「え?」
「キスは無しなのか?待ってたんだが。」
「キスは、いつもしてないんだ…」
「嫌か?」

顎に手をやると頬をぽっと染めた。さっきの方が余程大胆で淫らな事をしていたのに、キスをねだっただけとは思えない程恥ずかしがっている。

「嫌じゃ、ないけど…でも…口の中、お兄さんの味するよ…?」

煮え切らない態度など意に介さず、カミュがぐっと顔を寄せると目を閉じてくれた。

カミュはそっと、さっきまで雄を咥えていた薄い唇に唇を押し当てる。イレブンの唇がパクパク動いたので、様子を伺いつつ柔らかく食むと、ゆっくり応じてくる。
カミュは次第に大胆になり、唇を舐め上げ、そっと口内に舌を忍ばせた。
イレブンの舌が絡んでくる。キスには慣れていないらしい。器用とは言えない。
しかし、絡めあっているだけで、お互いに昂ぶってきた。

ゆっくり唇を離すと、つうっと糸が引き、恥ずかしそうなイレブンと目があった。

「ご、ごめんなさい。」
「なんでお前が謝るんだよ。」
「…だめなんです、僕、キスすると、舞い上がっちゃって…」

少年は誤魔化すように腕の中から逃げ出して、片づけを再開した。

「俺からせがんだんだから気にすんなよ。」
「そうじゃなくて…えへへ…体火照ってきちゃった。」

タオルを洗いに行こうとする少年を再び引き寄せ、もう一度キスをせがんでみる。
少年が応じてくれるので、もっと大胆に舌を絡めあうと、少年の手からタオルが落ちた。

「だめ…」
「俺も舞い上がってる。」
「けど、あの…」

今度は逃げないよう強く抱きしめる。

「二倍払う。本番、だめか?」
「だめ…」
「なんで?」
「それは…」
「経験、あるだろ?」
「…うん。」

カミュが少年の腕を引くと、力なくそれに従う。
そして座らせてから、もう一度キスをして、ゆっくりと組み敷いた。

「無理やりって趣味はねぇ。…ダメか?」
「…だめ…」
「理由を教えてくれ。」

そそらせるように耳や首に甘く噛みつくと、予想以上の甘い声が漏れる。

「ッあん…」
「お前と交わりたいんだ…けど、傷つける趣味はねぇから、諦めるために理由を教えてくれよ。」
「それは…」

少年は顔を真っ赤にして、目を逸らしてから小さな声で教えてくれた。

「…だかれると…その気になっちゃうんだよ…体目当てだって解ってるはずなのに…」

男娼に愛など抱く必要はない。
妊娠の可能性がないという理由だけで男を選ぶやつもいるだろう。
しかも、男を発情させるには十分な見た目だ、昔は売っていたのかもしれない。

「駄目だよね…きっと本当は向いてないんだよね、こういうの…」
「かもな。けど、今回は勘違いしてくれて構わねぇ。」
「…どういう意味?」
「その気になって欲しいってことだ。…俺がこれで帰ったら、次来た客にまた口で奉仕すんだろ?」
「そう…かな。」
「そいつも、エロい目でお前のこと見て、スッキリして帰るんだろ?俺はそれが嫌になっちまった。」

お前を俺だけのモノにしたい。

カミュは耳元で囁いた。
それはただの口説き文句でも、体の行為を許可して貰うための良い訳ではない。
本心だった。

「カミュさん…」
「呼び捨てで良い。…お前を抱かせてくれねぇか?今夜はもう、俺以外を見ないでほしい。」

少年の、イレブンの指が伸びて、カミュの髪を掴んだ。

誘われるように、カミュはもう一度キスをする。
それはさっきとは違う。イレブンが与えてくれる許可である。
彼の舌が必死に絡みついてきて、溶けてしまいそうに気持ちが良かった。

「いいんだな?」

唇を離して問うと、少年はふんわりと恥ずかしそうに頷いた。

「ちょっと待っててくれ、オイルもって」
「そこの引き出しに…。」

指差されたところを開けると香水の小瓶のような物の中に見えた。
自分が持っているものよりよほど上等にみえる。
カミュはそれをしっかり手に取ってきっちり温める。
その間にイレブンは下着を脱ぎベッドにうつ伏せになって、首を横に向けて様子を伺う。

「触るぜ?」
「うん。」

晒された尻はとても美しい。
柔らかそうなそこにそっとキスをすると体が震えた。
「だめだよ、そんな…」
「大丈夫。ゆっくり解していくからな。」

ぬちゃり、と静かな小屋の中オイルの音が響いた。


久しぶりというので丁寧にほぐす。
その間、カミュは再び自らのモノを育てる。

この美し過ぎる尻を見ていれば、勝手に興奮はするのだが、手は抜けない。

イレブンは勇気を振り絞って頷いてくれたのだ、後悔させるわけにはいかないし、
次も、と思って貰えるようにしなければいけない。
技量にはそれなりに自信はある、あとは丁寧に優しくすることを心がけよう。

カミュは秘部がしっかり解れるまで優しく弄り続けた。

「カミュ…もう大丈夫…」
「本当に?」
「男娼が気持ちよくしてもらうなんて、なんか変だね。」
「2人で気持ちよくなるんだろ?」
「…うん。」
「好きな体位とかあるか?」
「前から…かな。」
「わかった。」

久しぶりというのなら後背が負担が少ないかと思ったが、正常位を希望するのなら構わない。
カミュとしても、イレブンの表情を見られるのは嬉しい。

イレブンを仰向けにひっくり返し、そっとキスをしてから、脚を持ち上げる。
片足はイレブンが胸につくほど抱え込んでくれた。

「入れるぜ?」
「うん。」

指に残っているオイルを自分のペニスに塗りたくってから秘部に押し付ける。

「ッ…カミュのおちんちん、おおきいから入るかな…」
「痛かったら言えよ。」

ゆっくりと力を入れると、亀頭がぬぷりと飲み込まれた。

「ッあん」
「痛いか?」
「ううん、痛くないよ…おっきいね…さっきもすごくおっきかったもんね。」
「イイ所一杯刺激してやるからな。」

ゆっくりと押し込んでいくと少年の体は腰をふって喜んだ。

「ッ、あ、あんっ…すごい…きもちぃ…」

カミュのペニスはぐんぐんの飲み込まれて、付け根までぐっと押し込むと、ちょうどイレブンの奥に擦れた。

「っ…奥か?」
「おく…すごい、おくきもちぃ…」
「奥好きなんだな。いっぱい気持ちよくしてやるからな。腰ふるぜ?」

ゆっくりと腰を振り始める。
オイルがぬぷぬぷと音を立てる。

イレブンは口を少し開いて、はぁはぁと荒く息をしている。

「苦しいか?」
「平気…すごく、きもちい…あっ」

ある場所を掠めると体がピクンと跳ねた。
ここが良いのか?と煽ることはせず、その場所を優しく擦る。

「ん、ん、」

じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ

「ふぁ…そこ、すごくきもちぃ…」
「じゃあ一杯刺激してやるからな。」

ごちゅごちゅごちゅごちゅ

「んあああッ!」

イレブンは頭をふって身を捩る。

「はぁはぁ」
「イレブンはドライいけるのか?」
「いける…ドライしちゃいそう…」
「していいぜ?」

汗ばんだ額にチュッとキスをして、優しく擦り続ける。

「ん、はぁはぁ、もう、むり…」

ぱちゅぱちゅぱちゅ

「いっちゃう…いっちゃうよ…!」
「イっていいぜ?」

じゅぼじゅぼじゅぼじゅぼ

「ッいく、いく、いく、いく!」

うっ!と声とも呼吸ともつかぬ声をあげて、体をビクンと反らした。
ベッドと背中に隙間が空くほど白い体を弓なりに反らせて、イレブンはイったらしい。

「っ…はぁはぁ…」

息が整うのを待ちながら、汗ばんだ顔に張り付いている髪をのかしてやる。

「カミュ、すごくうまいんだね…こんなにすぐにイっちゃうなんて…僕、」
「相性がいいのかもな。お前の中気持ちがよすぎて、俺ももう、さっきお前が抜いてくれたのにもうイきそうだ。」
「中にだしていいよ?」
「いいのか?」
「うん…今日はもう、カミュが最後のお客さんだから…。本番しちゃうと、暫く立てないし。」
「やっぱ、無理させたか。」
「いいの…だって、今日は自分以外見ないでほしいって言ってたでしょ?」
「まあな。けど、営業妨害だよな。」
「大丈夫…。ねぇ、次は一緒がいいな。」
「ああ。」

イレブンの呼吸も整って来たので、再び律動を再開する。
今度は最初に言ったように、奥を突く。

カミュの硬い亀頭がイレブンの奥を刺激する。

「んッ…カミュは、きもちいい?ぼくは、すごくきもちい…」
「気持ちが良いぜ?この、奥、たっぷり気持ちよくするから。」

優しくゆっくりとした律動で奥を責める。
しかし再び息を荒く悶えだしたイレブンを眼下に見ていれば、否応なしに興奮し、段々とピストンが早まる。

ぱこ ぱこ ぱこ ぱこ

リズミカルなピストンに、イレブンの白い指がシーツを掴んだ。

「はぁ…はぁ…きもちぃ…もう、ぜんぶきもちい!」

声を抑えていたさっきとは打って変わり、喘ぎ声が漏れ始める。

「あんッ、はぁはぁ、きもちぃ、きもちい!もっと、もっとごちゅごちゅしてッ!」
「どこがいい?ここか?」

どちゅん

「やあん!!そこぎもちぃいい!!」

ぱんぱんぱんぱん

「いっちゃう!いっちゃうよぉおおお!!」

白い腰を掴むとそれだけで体が跳ねる。
可愛らしい乳首がツンと立っているのも扇情的で、律動を止め、思わずしゃぶりついた。

ぶちゅり

「ひゃあああん!!らめぇええ!!」

嬌声が可愛いので、両方の乳首を交互に思わず甘く噛んだり吸い付いたりしていると、髪が掴まれ、引きはがされた。
「らめッ!ちくびらめええ!すぐイっちゃうのぉ!」
そう言われると余計に責めたくなるが、無理をさせるわけにはいかない。
一度、涎で濡れそぼった唇にしゃぶりつき、顔を見つめながらピストンを再開する。
カミュのモノはさっきよりもずっと硬く、熱く、先走りが溢れてくる。

ばちゅばちゅばちゅばちゅ

「ふやあああ!!あ、ああんッ、あんっ、あんっ、」

律動に合わせて漏れる嬌声にお互いが高まり合う。

どちゅどちゅどちゅどちゅ

「いく…ぼく…いっちゃいそう…」
「俺もいくぜ?ドライの可愛いイき顔みせてくれよ。」

ぱんぱんと肌がぶつかり合う。

イレブンの恍惚とした目に自分が映っている。
それだけで嬉しかった。

本当に気持ちがイイのか、或いは演技なのか、カミュには判断が付かなかったが、
交わる熱に恍惚とする。

「ん、ん、ん、」
「そろそろイけそうか?
「イけちゃう…!カミュッ…!」

色めき焦る様な声で名前を呼ばれて興奮する。

カミュは一層激しく突き上げた。
先走りがとめどなく溢れ、隙間から漏れ出してくる。


じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ
ぱんぱんぱんぱん

「イくッ!あっいくっ!イっちゃうううぅううう!!や、やああん!!」

ビクッビクッっと体が痙攣する。
ぎゅっと締まった秘部の気持ちよさに、カミュも吐精した。

「ッ、あ、あぁぁぁ…」

流し込まれた熱にイレブンは身悶えた。

意識は飛んでいるだろうから、無意識なんだろうが、
硬いペニスを咥えこんだまま、軽く腰を振るのは流石男娼というところか。

カミュは汗まみれの女神の顔に優しくキスをして、ゆっくりと引き抜いた。
どろりと溢れる。

白い肌を自分のモノが汚していると思うと、やはり興奮した。

「カミュ…」
「大丈夫か?結構ムリさせただろ。」
「なか、すごくきもちよかった…カミュはよかった?ぼく、ひさしぶりだったからちゃんと出来たかどうか…」
「すごく気持ちが良かった。我がまま聞いてくれてありがとな。」

イレブンは少しだるそうだったが、笑顔をつくって首を横に振った。

「僕もワガママ、いってもいい?」
「なんだ?」
「もうすこし、いっしょにいて…」
「ああ。」



自分でするとイレブンは言い張っていたが、カミュがイレブンの体の始末をした。
その代りイレブンは最初と同じようにカミュの体をタオルで拭ってくれて、
身ぎれいになってから再びベッドで寄り添った。
腕枕をしてやるとイレブンはぴたりと体を寄せてきた。

恋人のそれのように髪を梳くとくすぐったそうに笑う。

「イレブンはなんでこういう仕事始めたんだ?金か?」
「うん…行きたい国があって…けど、船に乗らなきゃいけないっていわれて、でもお金どうやって稼ぐのか、わからなかったから…そしたら港町でおじさんに『エッチしてくれたら、お金あげるって言われて…。お金ってそうやって稼ぐんだって…」
「そうだったのか…けどもう溜まったんだろ?」
「たぶん…けど、行く勇気がないんだ。怖いんだ、行くの。」
「その為に稼いだのにか?」
「うん。変だよね。」

あはは、僕なんでこんな話してるんだろ、とイレブンは恥ずかしそうに笑う。

「行けるって思ったら、行くの怖くなっちゃったんだ。」
「なんでその国に行きたいんだ?」
「僕が生まれた国なんだって…記憶はないんだけど、興味だけはあって…」
「そうか…気持ち解らないこともないぜ?俺もどこで生まれたのかわかんねぇけど、きっとしったら行きたいって思う。」
「カミュも?」
「ああ…。」
「そっか…ちょっと安心した。」

何時までもこうしていたい。だがそういう訳にはいかない。
本番したら二倍払うといったが、はっきり言って二倍払ったら空になってしまう。
だから本当はまだ彼を拘束していたかったけれど、支払える対価が無かった。

自分が居なければあと2人は客をとれたはずだ。
旅費など多めにあって困るものではないだろう、目的があるのに、それを邪魔するようなことをするわけにはいかない。

「…そろそろ朝になっちまうか。何時までもこうしてたいけど、そういう訳にはいかねぇよな。」
「…いっちゃうの?」
「金作ったらまた来る。」
「いいよ、お金なんかいい。今日も要らない。」
「おいおい、いいわけねぇだろ。」
「いいの、だから、また来て。」
「イレブン、」
「明日には遠くの町にいっちゃうの?」
「そういうわけじゃねぇけど」
「…ごめん、変なこと言って。」

寂しそうな顔がいたたまれなくて、そっと体を引き寄せると、ホロリと涙をこぼしてしがみ付いてきた。
何処から来たのか知らないが、金の稼ぎ方も知らない少年がこんな場所で一人きり、身を売っているのは辛いだろうと思う。それも町を追い出され、こんな暗い井戸の中で誰かが来るのを待つのだ。


「俺と一緒に行くか?」
「え?」

イレブンは目を丸くした。
カミュ自身も無意識で口にした言葉に驚いた。
しかしまぎれもない本心だった。

「そんな風に寂しがられたり、頼られたりするのに弱くてな。お前が抱いた男に惚れちまうのと同じようによ。」
「…。」
「この手の稼ぎ方出来るんなら、別にこの町じゃなくても良いし、お前なら何処でも稼げるだろ?お前が飽きるまででいい、一緒にいかねぇか?」
「カミュはどこへいくの?」
「決めてねぇ。ただの根無し草だからな。」
「…。」
「お前が行きたいって国まで付き合っても構わないぜ?」
「本当に?」
「ああ。」
「僕、もう久しくここからも出てないんだよ?ご飯とかもみんな、お客さんの差し入れで済ませてたから…」

イレブンの目に見つめられる。
美しい瞳に吸い込まれるように顔を寄せると、目を瞑ってくれるのでそっとキスをした。

「けど、外に、出てみようかな…、君となら…」

純粋な信頼を感じる。裏の無い、まっすぐな信頼を。

「何があっても、俺が守ってやる。」
「ありがとう、カミュ。」

すっかり体調の戻った女神は、支度を始める。
茶色のタートルネックに黒のズボンをはき、紫のコートに腕を通す。
溜めてきたお金といくらかの食糧、生活用品をカバンに詰め込んだ。

カミュは先に支度を整えそれを眺めていた。

本当に行くんだな、とは聞かない。
彼の覚悟を疑う真似はしたくなかった。

「行くか。」
「うん。」

2人で小屋を出る。
幸い待ち人はいないようだ。こんなボロ小屋だ、イレブンの嬌声が聞こえなかった訳は無いだろうし、聞こえたなら今日は無理だと察して帰ったに違いない。

「今日で、店じまいだね。」

イレブンはドアの看板を外した。
待つ人のいない小屋に「ようこそ」は必要ない。
至高の時間を味わわせてくれる女神はもう、女神ではない。
今の彼は自分の道を決めた一人の少年だ。

光の挿し込む場所を目にして、少年は駆け寄った。

「外久しぶりだなぁ…お日様眩しいね!」

イレブンは楽しそうに笑った。
少年の笑みだ。

だがカミュには見えた。

光を浴びる姿こそが、まさしく女神のように見えた。

この女神を国へ、送り届けよう。
そう誓い、井戸を上がっていく。


後に思う。
この瞬間こそ、本当の至高の時間が始まりだった、と。

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