better than
初出:べったー/2018-02-14

もう本当に自己嫌悪に陥るレベルの出来です、すみません




2月14日のダーハルーネは、浮足立っている。

商売人の町だから、だろうか。
町の特産ともいえるスイーツを、よりアピールするイベントがある。
どうやらお菓子、主にチョコレートを大切な人にプレゼントし、想いを伝えるイベントだという。

元々性別に括りはなかったのだが、トレンドに敏感なのは女性たちだったらしく、
女性から男性へ、というのが最近の風潮らしい。

「(いや、イレブンは男だし。)」

カミュは必死にそう自分を言い宥めていた。

甘いものは好きじゃないと言っている自分に、チョコレートなど来るわけもない。
しかし、よりによって今日、イベント当日に、
ダーハルーネに来た、ということが怪しくて仕方がない。
しかもここの所、妙にセーニャと二人で買い出しに行くし、
これは脈があるんじゃないか、というような事象がたくさんある。
そのせいで諦めきれずにいる。
もやもやとそんなことを考えながら外を眺めていたところ。

「あの、カミュ様、お渡ししたいものがあるので、来ていただきたいのですが。」
セーニャに呼び出された。

「(え、まさか。)」

セーニャだって世間的に見れば美人に入るだろうから、一般人なら大喜びであろうが、
生憎自分にはもう世界に一人しかいない訳で、
一体どんな顔をして受け取ればいいのか、とか、
ただでさえ止まりかけていた思考回路が停止した。

呼び出されて部屋へ行くと、
仲間が全員そろっていた。
そして机の上には、たくさんのチョコレートが並んでいる。

「セーニャ、これって。」
マルティナとベロニカが目を丸くして感嘆の声を上げていた。

「今日は、ここダーハルーネでは、大切な人にチョコレートを贈る習慣があると聞きまして、それで、実は、皆様に感謝の気持ちを込めて、イレブン様と用意したんです!」

「(!?)」
カミュが驚いてイレブンの顔を見ると、得意そうにニコニコしていた。
「作ったのはセーニャだけどね。」
「でもイレブン様もちゃんと手伝ってくださったんですよ。」

イレブンの手作り…!!!
期待とは違ったが、でも、これはイレブンの手作りだ。




なんて、そんなもので満足できるくらい無欲なら、
盗賊稼業何かするわけもない。


酒好きの為に用意されていたウィスキーボンボンを摘み、
「殆どセーニャが作ったんじゃねぇか?不器用なお前がこんなにきれいに作れるわけねぇし。」
なんて、イレブンを冷やかしながら、ショックを必死に隠した。
イレブンは、僕は素材係だから、とニコニコ笑うばかりだったが、
普段と違う様子に気付く余裕さえ、カミュには無かった。

甘いものは苦手だから、とカミュは逃げるように部屋へ戻った。
イレブンの寂しそうな視線を、僅かに感じたが、振り向かなかった。



その後は、宿屋の窓から外を眺めていた。
運河沿いには上手く行ったであろうカップルや、これから意中の相手に渡そうとしている初々しい女の子何かが見える。
そこそこ賑わっている町の中でも、やっぱり目についたのは
背の高くて髪の綺麗な自分の恋人の姿だ。

「…やっぱし、浮くよなぁ…庶民のレベルじゃねぇもんな。」

生まれを知っているからかなのかもしれないが、
俯いている姿さえ世界で一番だと思っている。

「つーか、マジでしょげてるな…。ショックを誤魔化す為つっても、ちょっと言い方悪かったか。」

先ほど自分が言った言葉を思い出し、申し訳ない気持ちになる。
さっきのチョコレートは、イレブンが作ったとは思えない程出来が良かったのは事実だ、それでもきっと何かは手伝ったわけで、
もっと素直に喜んでやればよかったと大人げなかった自分を反省する。

彼が部屋へ戻ってきたら、人前では言えなかったけれど、と
たっぷり礼を伝えようとカミュは橋を渡っているイレブンを見守った。


その時だ。
1人の怪しい身なりの男が後ろからイレブンにぶつかってきた。
その拍子にイレブンは何かを落とし、男はそれを掏って走り去っていった。

「あの野郎、イレブンにぶつかった挙句掏りとか…!!」

その時点でカミュはすでに窓の桟に足を乗せていた。
イレブンが泥棒を追いかける瞬間に飛び出して一緒に追跡してやるつもりだったのだ。
しかし、イレブンは暫く硬直したあと、
叫ぶことも追うこともなく、再びトボトボと歩き出してしまった。

「おいおい、なんだよ、どういうことだよ。」

イレブンが掏られたものは、小さな包みだったように見えた。

「(まさか…チョコレート…!?)」

幾ら女顔とはいえ、そういう男が好きな女もいるはずだ。
いや、むしろそこらへんの男から貰ったのかもしれない。

イレブンが他の誰かからチョコレートを貰う、というのは全く想像していなかったが、
イレブンにだって貰う権利はあるはずだ。
それに何だかんだ甘いものが好きな彼が、それを貰って喜ばない訳もない。

恐らく、しょげていたのは、貰って恐縮していたからか。
或いは貰ったことで、自分にからかわれるのを想像して悩んでいたからではないか?
だからこそ追いかけることもせず、諦めようとしているのだ。
少しネガティブな彼のことだ、
自分は貰っていい様な立場じゃないと、勝手に思い込んでいるんだろう。

「イレブンの物は、イレブンの物だろ…!」

やはり、あのコソ泥は赦せるものではない。

そう思った瞬間に、カミュは飛び出して行った。






数分前のことだ。


「…どうしよう。」

イレブンは相棒が窓から見ているなんて気付くこともなく、
大事そうに小さな包みを両手で持ってトボトボと歩いていた。
セーニャとチョコレートを作り終わった後、実は、自分一人でウィスキーボンボンを作ってみたのだ。
無論、渡す相手は世界で一人。大好きな恋人の為のものだ。

彼の好きな銘柄の酒を用意して、甘いのが得意でない彼の為に苦めのチョコレートも用意して、ラッピングだってちょっと頑張ったつもりだ。
けれど、どうしてもそれを渡す度胸がない。

彼は途方もなく優しいので、どんなに味が悪かろうが、見た目が悪かろうが、
文句を言わずに食べてくれるだろうけれど、
はっきり言って不安しかない出来だった。
さっきのセーニャの手作りに比べたら、月とスッポンだ。

あんなに美味なものを食べた後で、しかも、
綺麗に出来るわけがない、とも言われてしまった今、手作りだなんて言える訳がない。
こんな不器用で料理音痴な自分の手作りなんか、到底食べて欲しいなんて言える訳がなかった。

「やっぱり…無かったことにしようかな…。」

チョコレートの替わりになりそうなものを1つ知っているし、一応準備も出来ている。
無理にこんなものを渡さなくても良いんじゃないか。

「このまま川に流しちゃえば…。」
不法投棄が頭を過り橋の上で突っ立っていると、後ろから男がぶつかってきた。
「あ、」
ぶつかった拍子に手からこぼれた小包を、男は鮮やかに掏っていった。

「ど」

どろぼう!と叫ぼうとして止めた。
あんなもの、無くなってしまってよかったんだ。
あんなに悲惨な出来だけれど、泥棒の腹の足しになるのなら、川のゴミになるより余程マシのはずだ。

「さっさと帰ろう…カミュも待ってるし。」

イレブンはトボトボと再び歩き出した。
俯く彼に、窓から飛び出す相棒の姿など気付くはずもなかった。


トボトボと宿の階段を上がり、ドアを開ける。

「ただいま。…あれ?」

部屋に戻ったが相棒の姿は無かった。
出ていくところをすれ違ったわけでもないし、どうしたのだろう。

「…お酒でも飲みに行ってるのかな。甘いの食べて辛いの飲みたくなった、とか?」

まぁいい、とりあえず、
無くなってしまったチョコレートの代わりを準備しなければ。
イレブンはそそくさと支度を始めた。






カミュは目で追っていた泥棒の行先をさっくり見つけ出した。
コソ泥が根城にしそうな場所何か解り切っているので、探すというほどのこともないのだが。
近くの屋根の上から様子を伺うと、コソ泥は数名でたむろしている。
そこには大量の小包が無造作に積まれていた。

「浮足立ってるやつらからチョコレートをかっぱらうなんて、朝飯前だな。」
「だろー?さーて、どれが一番美味いかな。」
「これなんてどうだ?ラッピングもすげぇ凝ってる。」
「そういうのは逆にイマイチかもしれないぜ?案外こういう素朴なヤツのほうが。」

そういって男がとった箱、それはイレブンが盗られた物に似ている気がする。
開けられてしまう前に取り戻さねば。ついでにコソ泥をメタメタに懲らしめなければ気が済まない。

カミュは、何かの折に盗んでカバンに入れっぱなしにしていた磨き砂を上からばら撒き、視界を奪ってから強襲した。





「悪ぃ、遅くなった。」

カミュが宿屋に戻ったのは、それから一時間ほど経ってからだ。
盗まれていたお菓子達を、元の持ち主に返すべく町人の協力を求めたりなんだりしてしまった結果時間を食ってしまったのだ。

「カミュ!どこ行ってたの!?」
イレブンは眉を顰めている。
「悪ぃ、ちょっと悪いヤツ懲らしめてきた。」
「え?」
「まぁ、趣味みてぇなもんだ。」
「…何それ。」
「まあいいじゃねぇか。」
「良くないよ!こっちは心配してたのに!」
「悪ぃな。ま、これで勘弁しろよ。」

カミュは得意げに、イレブンが盗まれたであろう小包を差し出した。

「…お前のだろ?」
「え?」
「相棒は何でもお見通しだぜ?これ、お前が盗まれたやつだろ?」

イレブンはそっと顔を背けた。

「…なんで、なんで取り返してきちゃったの…。」
「え?」
「…違うんだ。」
「は?」

いや、遠目に見た包装紙はこれに違いなかった。

「けど、」
「確かに…僕が盗られたものだよ、けど…。」
「…?」
「ごめん、カミュ、僕が盗られたからって、取り返しに行ってくれたんだよね。
けど…お願いだから一人で、そういうことしないでよ。心配したんだから…。」
「ザコ相手に後れを取るかよ。」
「そうかもしれないけど…!」

イレブンは、んぅう、と小さく唸って、本当に、本当に小さな声で呟いた。
「それ…ほんとうは…きみの、だから…」


「へ?」
カミュは明らかに聞き返したのだが、イレブンはさっぱりそれを無視した。
「何でもない。ありがとう、取り返してくれて。」
イレブンがカミュの手からそれを取ろうとするとさっと隠された。

「なんつった?」
「取り返してくれてありがとう、って。」
「その前。」
「1人で泥棒退治しないで、って言ったよ?ほら、僕のだから返して。」
奪い返そうと手を伸ばすが、カミュは渡さない。
腕のリーチはあるはずなのに、全然届かない。
それどころか、耳に息がかかる距離で要求される。
「それより後。言えよ。」
「やだ。」
「やだ、じゃない。言えよ。」
「いいの!だから!それ、僕のだから返して!」
「ちがうっつただろ。」
「違わないの!」
「本当は俺のつったよな。」
「聞こえてたんじゃないか!ばか!」
「バカで構わねぇ。お前のチョコレート食えるってんならな。」

今、自分の手にあるものは、イレブンから自分へのチョコレートらしいじゃないか。
不器用な包み方に、彼の手作りと確信する。

「お願い、だめ!開けないで!」
「何でだよ。」
「本当にダメだから!食べられるようなものじゃないから!」
「チョコレートだろ?生とかじゃねぇし、平気だろ。」
「平気じゃない!僕が平気じゃない!」

イレブンは奪い返すのを諦め、キッとカミュを可愛い顔で睨みつけながら、
自分の服をギュッとつかみ、言い放った。

「そんなチョコレートより、僕のほうがまだマシだもん!」
「え?」


「変なチョコレート食べる位なら、僕にしてよ!」


自分で言った台詞に、イレブンはより顔を真っ赤にして目を逸らしている。

「え?」
「だから、その…その、箱の中身より…その…。」

羞恥から泣きそうになっているイレブンを抱きしめてやった。
初心すぎる恋人に、あえて言葉で言わせるつもりは無い。

「わかった、わかったから。」
「カミュ…。」
「あー、もう泣くなよ…。俯いてるとこが美人なら、泣き顔は可愛いくてやべぇんだから。」

ベッドに座らせて、半泣きの顔にキスをしてやる。
「お前と比較しちゃ、何も勝てっこねぇんだからよ。」

よく見ると目の前の恋人は風呂上りらしい。
これは本当に、チョコレートの代わりに自分を差し出す覚悟だったと解る。
自分の口にしていなかった期待が、彼をここまで追い詰めてしまったのだろうか、と
少しだけ反省するが、彼の覚悟を無下にする気はサラサラない。

頬を伝う涙を舐めてやると、「ふっ」と甘ったるい声を漏らし、ぴくんと震えた。
ベッドに腰を掛けて痩躯を抱きしめる。
身を委ねてくるのが可愛らしくて、腕の中に閉じ込めてやる。
何度も彼の好みの軽いキスをしてやって、唇をたっぷり舐め上げてやる。
「カミュ…。」
名を呼ぶ声は実に甘ったるかった。そして幸福感を覚える。

「…俺も結構な甘党なのかもな。」
「なに…?」
「こっちの話。…なぁ参考までにききてぇんだけどよ。そのチョコレート何味?」
「え?…オリジナルなんか作れっこないから、セーニャの作ってたウィスキーボンボンをマネして、お酒とか変えてみただけ。」
「へぇ。」
「…なにか?」
「セーニャのマネなら、出来はいいんじゃねぇか?」

イレブンは、チョコレートか自分かという選択を要求してきた。
比べようも悩みようもなくイレブンを選んだが、
何度も言うが、そんなに無欲なら盗賊稼業なんかするわけもない。

両方手に入れる気満々だった。

「だめ!」
イレブンは小包へ伸びるカミュの腕を止めようと腕を伸ばすが、キスで封じられる。

「そもそも、俺が取り返してきたんだから俺のもんっちゃ俺のもんだろ。」

不器用に包まれている包装紙を外し、開封する。

「見ないで!」
「見る。お前が目を瞑ってりゃいいだろ?その間に食ってやるから。」
「いじわる…。」

そう言いつつも律儀に目を瞑る。
小さな箱の蓋を開けると酒の匂いがした。

「え、マジかよ。」
「やだ、感想言わないでよ!」
「いや、けどよ、これ、やべぇよ?」
「やだ!」
「そうはいってもな、すげぇだろこれ。」

「やっぱりだめ!」

イレブンは思わず、いや、カミュの策略通りに目を開けてしまった。
案の定チョコレートを抓んで食べているカミュと目が合う。
「何見てんだ。」
「君が一々感想いうからだよ!わざとでしょ!?」
「言うだろ。だって、これやべぇぜ?すげぇ形整ってるし、本当に手作りか?」
「そうだよ…。ねぇ、もう十分でしょ?見たし、いいよ、食べないで。」

にべもなくパクリを食べてしまった。

「…。」
「…。」
「…!」
「!?」
「これ、俺の好きな酒じゃねぇか。」
「そうだよ。」
「マジか…お前やべぇよ。つーか、本当に、愛情の詰め合わせだな、これ。
味も変じゃねぇし。つーか、チョコレート部分少なすぎてほぼ酒だぜ?
甘いの苦手な俺仕様すぎるだろ。」
「…そういうわけじゃなかったんだけど…ちゃんと出来なかっただけで…。」

実は散々失敗をして、チョコレートに余裕がなかっただけだった。

「マジ美味いぜ?」
「…本当に?」
「マジ。俺嘘つかねぇし。」
「…いま散々嘘つかれた気がするんだけど。チョコレート甘すぎない?」
「おう。お前も…って味見もできねぇのか。けど、これなら平気だろ?」

カミュはココアパウダーのついた指をイレブンに舐めさせた。
それを拭い取るように、しっかりと舌を絡める。

「んー。」
「つーか、俺、普通に指舐めさせた、悪ぃ。」
「…普通に舐めちゃったよ、ばか。」

イレブンはカミュの腕から逃げようと体を起こそうとするが、カミュはがっちりと捕えたままだ。
「チョコレート食べたよね?僕はいいよね。」
「どっちが美味いか比べねぇと。つーか、そんなにちゃんと準備して、エロく指に舌とか絡めてきておいて、何もしねぇはねぇよな?」
「…。」
「お前がやっぱり無理っていうんなら諦めるけどよ。」

カミュの性格上、据え膳は絶対に逃したくなかった。
しかし今回だけは事情が違う。
というのも実は、イレブンと体の関係を持ったのはまだ二回だけだ。

初回こそ本能を抑えきったと自画自賛するほどに丁寧だったのだが、
二回目が問題だった。
そもそも満月で、少し獣的だったこともある。
一度経験していた、ということもありイレブンもちょっとガードが甘かったし、
前戯なんかはめちゃくちゃ可愛く啼きまくってくれたので、調子に乗った結果、
本番で抑えが利かなくなってしまい、本能のままがっついてしまった。
イったことがあるわけもない中イキを前提に、反応がイイ場所を探り当ててガンガン攻めて、ほぼ強引にイかせてしまい、
中に出してから、イレブンが目を真っ赤にして泣いていることに気付いたという大失態をしでかした。

結果、3か月していない。
あれの後で、こちらからしたいなんて、言いだせるわけもなかった。
イレブンが、チョコレートの代わりに自分を、と考え付いたのはそれも理由なのだと思う。
そんな理由づけをしなければ、自分から言うなんて絶対に出来ない性格だった。

「…確かにチョコレート食ったし、嫌なら止めるぜ?
けど、今日は絶対に変な事はしねぇし、無理もさせねぇし、痛いっていったらすぐ止めるし、中だけでなんて無茶振りはしねぇし」
「もう…本音漏れすぎだよ。」

イレブンはしょうがないなぁと笑ってカミュのエラにキスをした。

「一回だけだよ?」

今日ばかりは甘やかされたかった。







イレブンを脱がせ、自分もさっさと脱いでしまい、ベッドで肌を合わせる。
風呂で準備をされていたイレブンの体をたっぷりと堪能する。
白い背中に、尻に、脚に、跡を残していく。

「恥ずかしぃ。」
「嫌?」
「んぅ…。」

一糸まとわぬ姿でベッドの上でうつ伏せになっている姿は、どう足掻いても扇情的だった。
しかも少しだけこちらの様子を伺おうと振り向いてくるのが実に色っぽくて、
そう言えば前回もそんな様子を見ていたのが、ああなってしまった原因だったと思い出す。

「原因はお前じゃねぇか。」
「君だよ…ッん…そこ舐めるのだめ…。」
「肩甲骨も感度いいよな。」
「カミュのさわり方がヤラシイから…!」
「マジかよ。舐めるわ。」

背骨やら肩甲骨やらを舐め上げると甲高い声を上げてくれる。

「やべぇ自分の首しめてるな、これ。」
「ん、ふっ…」
「そろそろ解すからな。」
「…ん」

何度もキスをしつつ、オイルをたっぷり使ってゆっくりと指を入れる。
「ッ…!!」
「悪ぃ、ゆっくりすっから。」
指で中を馴染ませつつ、背中にキスを落とし続ける。
優しく体を撫でてやると力みが抜けていく。

断りつつ指を増やしていく。
久しぶりとはいえ、イレブンの体は覚えているらしい。
ぬちゅぬちゅとオイルが音を立てる。
時折イレブンの抑えきれない吐息が混ざり、興奮しないなんて無理だった。

「カミュ…もういいよ?」
「マジで?大丈夫か?」
「たぶん…。」

そうっと秘部を広げてみる、体が温まっているからか柔らかくはなっているらしい。

「痛かったら言えよ。」

イレブンに触られたわけでもないのに、カミュのモノはすでに固くなっていて、
どれだけイレブンのことを求めていたのか、自分自身に示されているようでもあった。
秘部にオイルを足してから、白い谷に擦りつけて、その熱を刷り込む。
「あつい…。」
「何時もよりデカいかもしんねぇ、悪ぃ。」
「んぅ…かたい?」
「痛くねぇようにするから。…入れるぜ?」
手で広げつつ、ゆっくりと先を入れる。

「ッ!!」
ぬぷり、と収まる。
「お前の中すげぇ熱い。」
「かたい…。」
「ゆっくり進めるから。」
宣言通りゆっくりと奥へと入れていく。
「ッ、ひゃぁッ…!!はぅ…!!」
イレブンの中をなぞる様にゆっくりと押し込んでいくと、ビクンと体が震えた。
例の、イイ場所、前回責めすぎて泣かせた場所だ。
とはいえ、気持ちがイイ場所には違いないので、避けるわけにもいかない。

「少しだけ力入れるぜ?」
ゆっくり押し込むとビクビクと震える。
「んやんッ…!ッはぁッ…ッんぅ…!!」
白い指がシーツを掴んむ。ぎゅうぎゅうと握っているのをみて、やっぱり気持ちがイイには違いないんだろうと確信する。
しかしまだ攻めてはいけない、カミュは一度奥まで押し進めた。

奥に当たるとイレブンが甘い声を漏らした。
「全部入ったぜ?」
「かみゅ、きもちい?」
「ああ、やべぇ。」
「…こし、うごかすんでしょ?」
「お前の体が馴染んでからな。…平気か?」
「大丈夫だよ…。ねぇカミュ。」
「何だ?」

「今日は、ちゃんと僕で、きもち良くなって。僕のことも、ちゃんときもちよくして。」
「イレブン…。」
横を向いて何とかこちらを見ようとしているから、覗き込んでやると恥ずかしそうにしたが、それでも少し嬉しそうにはにかんだ。

「今日はちゃんとするから。」
無理な体位にならないようにしなければ、とカミュは枕をとった。
「腰あげるぜ?」
繋げたままイレブンの腰を抱え上げて枕を挟む。
「んッ…。」
「ゆっくりするからな。」
腰が少し上がったので、イイ場所を擦りやすくなった。
奥を数度軽く突いてから、ゆっくりと抽挿を始める。

ぬっちゅ ぬっちゅ
「っ…かみゅ…。」
イイ場所を擦りつつ奥を突きあげ、ゆっくりとぎりぎりまで引き抜いて、またゆっくりと押し込む。
「ん…ッ、ふぅッ…」
イレブンの声が上ずってきて、少しだけ自分で腰を動かした。
「寒くねぇか?」
「へいき…。」
腰を掴んでいた手でゆっくり辺りを優しく撫でると、体を跳ねさせる。
「体中敏感になってんな。」
「っん…かみゅの指、温かくて、きもちがいいよ?」
「お前の肌もスベスベで気持ちが良いぜ?」

イレブンの顔の近くに右手をついてやって、手首を握らせた。
「ちょっと強くするからな。痛かったら爪立てろよ。」
「ん…。」
性感帯に何度もキスをして、少しだけ抽挿を速める。
「ッあ…!!」
ぬちゅ、ぬちゅとオイルで音を立てると、イレブンはその音にも煽られているらしい。
どんどん感度が良くなるうえ、時折甲高い嬌声を漏らすようになっていた。

「ッはぁ、はぁ…かみゅ、かみゅッ…」
「イレブン…マジやべぇから…ゆっくりイかせるから。」

体を擦りつけ合うようにするのは気持ちが良かった。
お互いの熱が上がっていくのを感じて、どうにかなりそうだった。

ぬっちゅ ぬっちゅ

「ッ…かみゅ…。」
「大丈夫か?」
「ん、いたくない、…けどッ、んッ…」
「けど…?」
「キスしたい…はぁッ…」

ご要望に沿ってキスをしてやるとイレブンは真っ赤な顔のまま少しだけ微笑んで恥ずかしそうに、嬉しそうにしてくれる。
それがもう、どうしようもなく可愛くて、カミュの熱がより高まった。

「なぁイレブン。」
「…なぁに?」
「体位変えていいか?」
「ん…?」
「顔見てぇし。」
「ん、ぼくも…。」

カミュはさっと引き抜いて、イレブンを仰向けにし、腰の下に枕を挟む。
それから、膝を抱え上げて、熱を失ってパクパクしていたイレブンの大事なところに再びゆっくりと挿入する。イレブンの中は失ったものを再度手に入れたかのようにぎゅうぎゅうと締め付けてきた。

「顔見られるの恥ずかしくねぇか?」
「いまはへいき…。」
「ちょっと腰来るかもしれねぇけど、優しくするからな。」
「いっぱい、キスして。」
「ああ。」

舌を絡める濃厚なキスを何度もしてから、抽挿を再開する。
奥を優しく突きあげるとピクンピクンと体が震えた。
「奥も、結構イイ反応するよな。」
「んッ…」
「まぁ…ハードなのはしねぇから。とりあえず、さっきのイイとこいっぱいやるからな。」

イレブンの締め付けてくる力で、自身のカリを扱きつつ、
浅い場所にあるイイ場所を優しく責める。
目の前にある、目を瞑り顔を真っ赤にしながら気持ちよさに耐えている姿は、オカズにすれば3か月は持つと思われる。
そんなものを見つつ、イレブンの中で気持ちよくなるなんて最高に贅沢だった。

どちゅん。

「ッあ!!!」
「悪ぃ。」

強くしてしまったと慌てるが、秘部がきゅっと締め付けてきた。
「んッ…」
「…ダメじゃねぇみてぇだな。じゃあ、ちょっと強くするからな。」

ぬっちゅ ぬっちゅ ぬっちゅ ぬっちゅ

「んふっ…かみゅ…。」
「イレブン、すげぇ気持ちが良いぜ?」
「かみゅ…かみゅ…。」
「あー…ほんと、その声たまんねぇよ…。」

今日はイレブンもすっかり出来上がってるし、強めにしてもいいんじゃないかと、
カミュはゴリゴリとイイ場所を責めた。

「ひゃあん!!あんッ!!あん!!」
「イイ声でてんな。」

ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ ぐちゅ
「ん、ん、ん」
「ちょっと強くするぜ?」

どちゅん
「ッ…!!!!んあッ…!!」
ぎゅっと締まり、体が震える。
頭を振って耐えている様子を眼下に見て、先走りが溢れるのを止めることもできない。

「イレブン、そろそろイこうぜ?」

丁寧に、とはどこへやら。
カミュはすっかりイレブンのイイ場所を執拗に責め上げた。
中はオイルだの先走りだので、ドロドロだったがそれも最高に気持ちが良かった。

じゅっぱ じゅっぱ じゅっぱ じゅっぱ

「ッああああっ!!らめ、かみゅッ!!」

背中を反らせて千切れんばかりにシーツを掴んでいる。
秘部でカミュを締め付け、体を震わせ、嬌声を上げ続ける。

「ッあんッ!かみゅ、こわれちゃうぅッ!!」
「狂っちまえよ。」
「やぁんッ!!むり…むりッ!!」

体を大きく跳ねさせる。多分イってるだろう。
けれど、カミュは続けた。
前回とは違って、こんなにも激しく感じてくれているのだから、
このイく感覚を体に覚えさせてやろうと思った。

「ああンッ、かみゅ、むり、ぼく…!!」
「気持ちイイか?」
「イイッ…!!きもちいいッ!!」
「お前今、イってるからな。」
「いってるッ…?ッあんっ!!」

一度腰を止め、イレブンの息が少し収まるのを待つ。
「カミュ…。」
「気持ちがイイだろ?それ、イってんだからな。」
「いく…?」
「次また、すげぇ気持ちよくなったら、イくって言えよ?」
「ん…ッひゃああん!!」

カミュは再び腰を動かし始める。
すっかり把握したイレブンの中のイイ場所を優しく的確に刺激する。
「っはぁはぁッ…!!かみゅっ、だめ!きもちよくなっちゃうッ!!」
「イくって言えよ?」
「いく…!いく…ッ!いっちゃう・・・!」

どちゅ どちゅ どちゅ どちゅ
「はぁッはぁッ、あんッあんッ!!」
「イけそうか…?」
「んッ…いく…!!ッ…!んんッぁあッ!!!」

腰をビクンんと跳ねさせて、体が弓なりに反る。
秘部にぐっと力が入り、小刻みに震えて、内壁がぎゅっと熱を求め蠢いた気がする。

「イレブンッ…!!」
「やぁああ…んッ…!!!」

力み、銜え込むの力で数度自身を扱いて、
カミュはイレブンの中にたっぷりと吐精した。

「はぁ、はぁ…。」
「…平気か?」

汗で額についた髪をのかしてやりつつイレブンの様子を伺うと、
イレブンは顔を真っ赤にして、しかも指を少しだけ噛みながら、呟く。
「なか、あついよ…きもちいよ…」

イレブンが「一回だけだよ」と言ったのは忘れていない。
けれど、
「美味そうなもんがあるのに我慢しろなんて無理だろ。」

カミュは怒られるのを承知で、二度目を始めた。











隣から恨めしそうな視線を感じる。

彼からしたら最悪の日だっただろう。
嫌だといってもチョコレートを食べられ、チョコレートの替わりのはずだった体も食べられ、1回だけだと言ったのに3回もさせられたのだから。

「いじわる、うそつき、ばか。」
「結構。」
「いっぱいキスしてくれるっていったのにあんまりしてくれなかった。」
「これから一杯してやるよ。」

腰痛から動けない恋人に優しくキスをしてやると、悔しそうながらも少し微笑む。

「さて、今日のお礼は何を返してやろうか。」
「お礼?」
「しらねぇのか?どうにも来月はお礼をする日があるらしいぜ?」
「そうなんだ。」
「商魂たくましいよな。まぁ便乗させてもらうけどよ。」

「気持ちがいいやつ、とかはNGだよ?」

先手を打って拒否してきた。

「解ってるって。」

今日は最高の一日だった。
願っていたチョコレートも貰えたし、イレブンの楽しい夜も過ごせたのだから。

だからお返しは、イレブンにとって最高の一日にしなければいけない。
再び微睡みはじめた恋人を抱き合寄せつつ、一か月後に思いをはせる。



ダーハルーネの浮足立ったある夜のことだった。

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