記憶のない僕と
初出:べったー/2018-08-19






イレブンの背中を守れなかった。


とっさのことだった。
カミュは叫んだが、間に合わなかった。

魔竜のたましいを収集していた時のことだ。
イレブンは、不意打ちを食らい、おにこんぼうの尻尾に払い飛ばされた。
薄っぺらい体が崖に叩きつけられて、ぐったりと気を失った

次に目を覚ました時、イレブンは、記憶を失っていた。

自分が誰なのかも、何故旅をしているのかは勿論のこと、
目の前にいるのが唯一の血縁者ということも、体を支えているのが大事な相棒だということも、
すっかり忘れてしまった。

仲間は言葉を失った。
どう言葉をかけて良いのか思いつかなかった中、ロウはニコニコと微笑み、孫を必死に安心させる。

「いいんじゃよ、お主が生きているだけで、おじいちゃんは幸せなんじゃよ。」
「おじいちゃん…。」
「そうよ、イレブン。だって、あんなに壁に強打されたんだもの。本当に無事でよかったわ。」

仲間はイレブンの命に別条がなかったことを喜んだ。
小さな子をあやすようにそれぞれ微笑み、困惑したままのイレブンを受け止めてやる。

そうしていると、イレブンも少しほっとしたような顔をして、何時ものように柔らかく微笑んだ。

「今日は、早めに宿をとりましょ?」
「心配ですから、お医者様にも見ていただかないと。」
「そうね…シルビアさん、最寄はソルティコかしら?」
「そうね!腕のいいお医者様もいるし、アリスちゃんに言っておくわ!」

立ち上がりよろめいたイレブンを、グレイグが抱え上げ、
一行はソルティコへ向かった。

そこで医者に見せたところ、"一時的な記憶喪失"という。

まだ昼過ぎだったが宿の部屋を取り、イレブンをセーニャに預けてから、仲間会議をする。

「これは相談なんじゃが…。」

ロウは提案した。
イレブンには暫く、勇者の運命については話さないでおこうと。
一時的ということだったし、様子をみたいと。
なにより、イレブンのことだ、記憶喪失になった自身を責めてしまいそうだから、と。

反対意見はなく、仲間は暗い雰囲気のまま各自の部屋へ戻った。



カミュは、黙ったままだ。

イレブンの背後に危機が迫っているのに、最初に気付いたのはカミュだったし、叫んだのもカミュだ。だが間に合わなかった。
シルビアには、仕方がなかったんだから自分を責めないように、と言われたが、どうしてもそうは思えなかった。

愛するイレブンが、自分を忘れてしまったなんて。
イレブンにとって大事な人たちのことを、忘れさせてしまったなんて。

頭では、回避の仕様が無かったと思ってはいるのだが、
受け止めることも、器用に微笑む自信も無い。


カミュは大きく息を吐いてから、宛がわれた部屋のドアを開けた。

「カミュ様がお戻りになられたようですわ。」
「うん。」

ベッドの上にはセーニャと話をしているイレブンが居て、カミュと入れ替わるように、セーニャは「では後ほど。」とニッコリあいさつをして部屋を出て行った。

2人だけが残される。

何時もなら、2人きりの時間を楽しむのだが、そんな気分になれなかった。

「頭、痛くねぇか?」
「はい。…あの、」
「どうした?」
「えっと…カミュさん…ですよね?」
「ああ。けど、さん付けしなくていいぜ?」
「でも…僕より年上だって聞いたので…さん付けじゃだめですか?」
「…構わねぇよ。」
「ありがとうございます。」

ふわりと笑う笑顔は、今までと同じだ。けれど、今の2人は、恋人でも相棒でもない。
そう考えるほど、胸が痛くなる。

「もう少ししたら飯の時間だ。…食えそうか?」
「はい!お腹すきました!」
「そうか、よかった。相変わらず大食漢のままか。」

今までと変わらないところを見つけるたびに、カミュは辛くなった。

普段より少し早めの食事をした。
イレブンはマルティナとシルビアに挟まれ、世話を焼かれながら、舌鼓をうっていた。
無意識にシチューを選んだ時は、一同顔を見合わせたが、
大好物のシチューで記憶がよみがえる、なんていう奇跡は無かった。

カミュはイレブンを囲う輪から少し離れて、見守っていた。
このまま記憶が戻らなかったら、
自分たちの思い出はどこへ消えるのだろうかと、そんなことが頭を過った。


食事から戻り、再び部屋で2人きりになる。

カミュは世話焼きな相棒を演じて、イレブンに風呂に入るよう促す。
イレブンは素直に従って風呂へ入っていった。
相変わらずの長風呂だ。1人きりの時間、カミュは複雑な心境のまま、出てくるのを待っていた。

「お待たせしました。」
「おう、疲れとれたか?」
「はい。」

イレブンはほかほかの顔で、カミュを見つめ返してくる。

「どうした?湯ざめするぜ?疲れてんだ、早く寝とけよ?」
「あの…えっと、カミュさん。僕、お風呂の中でずっと頑張って、何か一つでも思い出そうって頑張ってみたんですけど…。」
「無理すんな。頭痛くなるぜ?」
「大丈夫です、けど、何も思い出せなくて…それで…」

申し訳なさそうな顔をする。

「その…シルビアさんから聞いたんですけど。」

あの乙女はまた余計な事を言ったんだろう。

「その…僕はカミュさんの相棒だったんですか?」
「そうだな。でもお前がそれに縛られる必要はねぇよ。別に、相棒じゃなきゃいけねぇってわけでもねぇ。…俺が名乗っただけだ。」
「本当にそうなんですか…?」

記憶のない彼に、どうやって愛してもらえるというのか。

牢屋で見つめ合ったあの時から始まった、2人の記憶が無いまま、
どうしたら彼をもう一度振り返らせることができる?
自信がなかった。もう一度愛して貰える自信が。
あれだけの苦労を共にした後でも、カミュの告げた想いにイレブンは動揺して、2週間は返事を保留にされたのだ。
今の自分が受け入れて貰えるとは思えない。

「貴方が名乗ってくれた時のことも、今は思い出せないんです、けど、きっと僕もあなたを相棒だって思ってましたよね。」
「…かもな。」
「だって…辛いんです。」
「どうした、どこか痛むか?頭痛いか?」
「胸が…貴方が辛そうな顔をしているのを見ると、胸が苦しくなるんです。」
「イレブン…。」

イレブンは涙ぐんだ声を少し荒げる。

「シルビアさんから聞いたんです!ただの相棒じゃなかったって。貴方は…恋人だって…」

カミュの胸がキリリと痛んだ。
イレブンが自分を責めるであろうことが、目に見えるようで、思わず言いはねた。

「…だったら何だって言うんだ?お前には…お前が考える必要はねぇだろ?」
「けど!」
「さっきも言ったけどよ、お前がそれに縛られる必要はねぇ。」

いっそ白紙にしたかった。イレブンの記憶が戻ったら戻ったで、よりを戻せばいい。
度胸があるカミュは、イレブンから目を逸らした。


零れたような声が聞こえる。


「…記憶の無い僕じゃ…だめですか?」

驚いて顔を上げる。

「貴方と…一緒に過ごした記憶がない僕じゃ…恋人にはなれませんか…?」

今だって愛おしい。抱きしめてやりたい。
記憶を失ったことで自分を責めているこの、馬鹿真面目で責任感が強くて、半泣きの大きな目で、寂しそうに見つめてくるこの可愛い恋人を。

「イレブン…。」

カミュは、ゆっくり立ち尽くしている恋人の元に歩み寄って、
そっと肩を抱きよせて、優しく抱きしめてやった。
イレブンは大人しく身を委ねていた。

そのままそっとベッドの上に座り、
何時ものように髪を撫ぜ、頬をなぞってやると、
大きな目がカミュを見上げた。
はらりと大粒な涙がこぼれて、ああ、自分が恋人を泣かせたんだとカミュは自責した。

「お前は変わっちゃいねぇな…相変わらず、思ったことははっきり言うし。」
「そう…ですか?」
「ああ。そうだよな…お前に記憶があろうが無かろうが…俺はお前の恋人だった。それをその先どうするかはお前次第で…俺は変わらずお前のことを。」
何時ものように顔を少し覗き込むと、イレブンはぽっと顔を赤くして、目を瞑ってくれた。

そっと唇にキスをする。
まるで付き合いたての、あの頃のように。

「…はずかしいです。」
「ちゃんと目瞑った癖に。」
「そ、それは、解らないんですけど、何となく…。」

イレブンはカミュの肩に頭を預ける。
「さっきのカミュさんの目、すごく、優しかったです。僕は、その目にそうやっていつも見つめて貰ってたんですね。」
「お前もいつも通り可愛かったぜ?」
イレブンは驚いたように頭を起してカミュを見る。
「え?そ、そうなんですか…!?僕男なのに?」
「ああ。嫌がるけどな。」
「そうですよ!だって男なのに可愛いなんて。」
「はは、ああ、その反応も、今までの通りだ。…そんなに嫌か?」
「嫌です。…けど、カミュさんになら、まぁいいかなって思います。」

そういってまた肩に凭れてくれる。

記憶は無くても、イレブンそのものだと感じて、カミュの心もすっかり落ち着いた。

もし、このまま記憶が戻らなくて、そのまま邪神を倒す羽目になっても、
そしたらその後で記憶を取り戻す度に出ればいい。
その旅もまた大事な記憶になるはずだ、そんな風に考えられる。

安心感からか、無意識のうちにそっと背中に腕を回し、腰を優しくさする。

「イレブン。」
「はい。」

律儀に顔を上げてくれる恋人のこめかみにキスをする。

「わっ…もう、ビックリしました。」
「悪い、何時ものくせでな。」
「何時もこんなことしてたんですね。…腰を撫でるのもですか?」
「え?ああ、そうだな。癖つーか。」
「ん?」
「ああ…まぁなんだ、こうしてると大体お前がその気になってきて」
「その気?どの気ですか?」

イレブンは至って真面目に聞いてきている。だからこそ少し回答に窮する。

「どの気って…まぁなんだ、恋人の営み?」
「いとなみ…?」
「こういうやつ。解るか?」

カミュは左手でイレブンの太腿を撫で、内腿をぷにっと抓む。

「ひゃん!…もしかして、その…エッチですか?」
「お、良い勘してんな。」
「え、エッチまでしてたんですか!?だって、僕男なのに!?」
「男同士でも出来るだろ。…お前の体は覚えてると思うぜ?」

イレブンの体はカミュのことしか知らない。
必死に受け入れてくれるあの、無垢な体。
久しぶりだったこともあり、思い出すだけでカミュの半身が疼いた。

「…もしかして、カミュさん今僕とエッチしたいんですか?」
「…。」

カミュは答えを寄越さずにイレブンをベッドに押し倒した。
驚いている水色の目を見つめる。

「…そりゃ、大事な恋人だからな、セックスして確かめあいたいっつーか。今日は、いいけどよ。けど…いや、なんでもねぇ。別に体の関係がねぇとってわけじゃねぇし。」
流石に拒否されると思った。
自分でもどうかと思った。記憶がすっとぶほど頭を強打した恋人に何を要求しているのかと。

「別に…僕、いやじゃないです。」

イレブンから帰って来たのは意外な返事だった。
記憶がある時の方が余程抵抗してくる気もする。

「それに!…エッチしたら何か思い出すかもしれないです。」

イレブンが気を使っているのは解った。
気を遣わせながらセックスするというのは、少し気が引ける。

「いや…だから、無理強いするつもりはねぇし。」
「じゃあ、いつも、僕がしたがってる時しかしなかったんですか?」
「え!?」

イレブンからなんて左手で数えるほどもない。
殆どが、カミュがイレブンをその気になるまで誘惑しまくっての行為だ。

「…いや、なんだ、お互いに、こう、その、だな?ちゃんとお前を、その気にさせてから」
「ほら。結局カミュさんがしたい時じゃないですか。…けど、解ります。きっと僕、カミュさんに絆されてましたよね…カミュさんの目に見つめられると…いいかな、って思えちゃうんです。」

そう、顔を寄せて目を瞑るので、思わず普通にキスをする。

「えへへ…ドキドキする。」
「あー、イレブン、本当に無理をさせるつもりはねぇんだ。けど…前戯までなら…いいか?」
「ゼンギってなんですか?」
「あぁ…お互いにこう、触るっつーか。」
「触るんですか…でも、ちゃんと出来るかな…。その、良く覚えてないので…カミュさんに教えてもらえると助かります。」
「ああ。…嫌だったら嫌ってちゃんといえよ?無理強いはしねぇから。」
「はい。」

とりあえず数度キスをしてから、イレブンの服を脱がせる。
ふっくらした乳首を隠す様子がない。自分の乳首が女のように大きくなったという記憶がないんだろう。下腹部さえそう抵抗はないらしい。
カミュもまた服を脱ぎ捨てた。

裸になった2人はベッドの上に座って、何度かキスをする。
イレブンの反応は前とほぼ変わらない気がした。

「とりあえず横になってくれるか?」
「はい。」

仰向けで寝かせて、カミュは覆いかぶさるように顔を覘き込み、白い体にキスをしまくる。
額、鎖骨や胸へは何時もの通りに。
それから普段と異なり、恥骨を舐めるようなキスをする。

「そ、そんなところまで…!」
「本当はもっと下にしてるんだぜ?」
「下って…え!?」
「ここな。」

カミュが指でその場所を軽く弾くと、イレブンの体がビクンと震えた。

「え、そ、そんな…!」
「そりゃそうだろ。セックスだぜ?」
「けど…そこ舐めなくても、エッチは出来るんじゃ…え、もしかして僕がするが」
「んなわけねぇだろ。お前はされる側。」
「そ、そうです、よ、ね…なのに、僕の、舐めちゃうんですか…?」
「ああ。お前の体で舐められねぇとこなんかないぜ?お前も舐めてくれたし。」

何気なく言った一言だったが、イレブンは目を大きくして驚く。

「ぼ、僕もですか!?」
「そんなに驚くかよ…。けど、お前にそれをさせる気は」

さっき言った「無理強い」になるかと思ったのだが、この負けず嫌いな少年の何かに引っかかったらしい。

「それは、“記憶がない僕”にはさせられない…って、そういう意味ですか?」
「そういう意味じゃねぇし」
「そ、そのくらいできます!」

何かに少しお怒りなのか語尾が強くなる。
「今度はカミュさんが寝て下さい。カミュさんがしてくれたみたいなこと、ちゃんとしてみます。」

カミュがベッドに横になると、イレブンは失礼します、とカミュの腰の上に跨る様にしゃがむ。

「まずは…顔?」

イレブンが、チュッと頬に可愛くキスをしてくれる。
それから、まさしくカミュがしたのと同じように首や鎖骨にキスをして、胸から腹へと段々降りて来たのだが。
「カミュさんのお腹…思った以上に硬いですね…割れてる…。」
「鍛えてるからな。」

イレブンは自分の腹を見る。凹凸などほぼない。

「むぅ…僕も鍛えなきゃ。」
ぼやきながらチュッと腹筋にキスをしてくれた。
「…すごい…固くて…あつい…。」
イレブンは暫くその腹筋にご執心していた。
指で割れ目をなぞったり、その一つ一つにキスをしたりしている。
「…記憶無くなっても腹筋フェチとか、流石だな。」
「え!?僕、腹筋好きだったんですか!?」
「ああ。あと指とか。」

イレブンは顔を赤くして、カミュの指を見る。それから少しうっとりした顔をする。
カミュがこれ見よがしに指を口元へ寄せると、それをパクリと咥えた。

「んッ」

何の指示もしていないのに、イレブンの不器用な熱い舌が絡んでくる。
関節に舌を這わせるようにクチュクチュとしゃぶる。

「んッ、ふっ」

カミュの腰に座り込んだまま、ぷちゅぷちゅと指をしゃぶっている姿は淫乱そのものだ。

ゆっくりと指を引く抜くと、つぅっと糸が引く。

「あ…」

トロンとした目でそれを見つめていたが、はっと我に戻ったらしく、顔を赤くした。

「か、カミュさん!」
「いや、舐めたのお前だし。」
「ち、違います!カミュさんが、指を出してくるから…!」
「はいはい。」

カミュはドロドロになった指で、イレブンの乳首を強く撫でた。

「ひゃああん!」

勝手に出た嬌声に自分で驚いたのか、目を見開いて口を押える。
「わ、…ぼ、僕の声…!?」
「何時ものことだぜ?」
「い、いつもこんな声出してたんですか…。」
「ああ。もっと触ってやろうか?」
「い、いいです!…そ、そうだ、カミュさんのお腹にキスしてるところだったし。」

イレブンは逃げる様に腹へのキスを再開する。
それから、恥骨の下に目をやった。

「カミュさん!」
「どうした?」
「も、もう、その、立ち上がって、硬くなってるみたいなんですけど!」
「そりゃなぁ。体中キスされて、可愛い声も聞いちまったし。」

カミュのペニスは半勃ちしている。

「そ、そんなに溜まってたんですね…。」

イレブンの指が恐る恐るそれに触れる。
焦らすような指にビクンと震えた。

「ッ!?」

驚きながら、イレブンは恐る恐る撫でる。
「あつい…こ、ここに…キス、するんですよね…?」
「まぁ…だから、嫌だったらしなくても」
「だいじょうぶです…!たぶん…!」

イレブンはふぅ、と息をついてから、改めてそこへ顔を寄せる。

そして、恐る恐る舌を出し、そっと亀頭を舐めた。

ビクンッとすると、ビックリして仰け反る。
「!?」
「やっぱもういいから」
「い、いえ、そういうわけには…!」

意地になっているらしい。
次はそっと手を触れて、ペニスそのものを口元に寄せて、チロチロと舐める。

まるで子猫がミルクでも飲むような仕草にカミュものはどんどんと質量を増していく。
それに比例するように、慣れてきたらしいイレブンは大胆になっていく。
親指と中指で何気なくカリを刺激しながら、裏筋や鈴口をチロチロと舐め続け、時折吸い付く。

「はぁ…カミュさんの…すごく、おっきいんですね…」
「まぁな。」
「すごい…」

とろけた目でそれを見つめている。
カミュがそっとイレブンの頭に触れて、ゆっくりとペニスへ近づけると、
イレブンは小さな口を開き、亀頭を半分ほどパクリと咥えた。
咥えたまま、再びチロチロと舐める。

「ッ…」
「んっ…はぁ…」

ぷちゅりと、ペニスを引き抜く。
滴れる涎が堪らなく卑猥だった。

「お前が美味しそうに舐めるから、ギンギンだぜ?」
煽ると、はっとした顔をして口を拭った。
「か、カミュさんが!」
「しゃぶれとは言ってねぇよな?」
「けど!…うー…」

膨れながらも、イレブンの目がまだカミュのモノを捉えている。

「どうした?」
「あの、ゼンギって、ここまでですか?」
「ここまでって?」
「だって、カミュさんの…苦しくないですか?」

苦しいと言えば苦しい。だが、流石に口に、という気にはならない。

「じゃあ、手で出るまでシコってくれるか?」
「はい!」

イレブンは少しだけ体を寄せて、ガチガチのペニスにそっと触れようとする。
「ちょっとまて。」
「え?」
「直接は結構アレだからな…オイル出すな。」

カミュは腕を伸ばし荷物からオイルを出す。
「オイル?…料理用?」
「ちげえって。食用じゃねぇよ。オイルってのは色々使えるんだぜ?けどまぁ、これはセックス用。」
「せッ!?」
イレブンが目を丸くする。
「男は濡れないだろ?濡れてねぇ状態でなんて、流石にな。」
「そ、そうですよね…。」
「手出せよ。」

イレブンが両手を御椀のように出してくれるので、とろりと垂らした。

「あ、何か結構いい香りしますね。」
「まぁな。お前に塗りたくるもんだし、それなりの買ってんだぜ?」
「…僕に!?」
「基本的にはな。お前の方をオイルで柔らかくしてから、つー感じで。」
「そ、そうなんですね…。」

手のひらのオイルを見つめている。
「これが、僕のおしりに…。」
「どうした?」
「え!?え、な、なんでもないです。かたいの…その、さすりますね。」

手の中のオイルをぬたぬたと暖めてから、そっとペニスを掴む。
それから、ゆっくりと摩り始める。

「前より巧くねぇか?」
「そ、そうですか?」

ぬちゃぬちゃと音が立つ。
イレブンの指は暖かく、気持ちがいい。
カミュはすっかり気持ちよくなって、愛する指にしごかれながら、普段の行為を思い出し、より上へと向かおうとしたのだが。

「カミュさん!」

扱くのが止まり、イレブンが何故か焦っている。

「どうした?」
「透明なのいっぱい出て来ちゃったんですけど!」
「…出るだろ。」
「そうなんですか!?」
「お前の指が気持ちイイってことだ。」
「そ、そうなんですか…。」

ぬちゃぬちゃと手淫が続く。
イレブンは真面目な顔でペニスを見つめながら、イイ場所をしこしこと擦り続けていたのだが、ふと手が止まった。

「あの。」
「ん?」

眉を顰め少し困ったような顔をして、聞いてきた。

「手でこう摩られて出るのと、…その…本番と、どっちが気持ちいいんですか?」
「…。」
「答えにくいっていうことはやっぱり」
「そりゃ圧倒的に後者だけど、別にそんなことさせるつもりはねぇからな。」

それから少し、カリをクニクニと刺激しつつ何か考えていたのだが、ふと指を止め、カミュを見つめる。

「本番…します。」

「だから、無理」
「無理はしてないです!…僕が…嫌なんです…。」
「イレブン…?」
「これから、相棒として、恋人として過ごしていきたいのに、こんなに気を使われるばっかりで…。」
「…。」
「駄目なら…別に、無理は言わないです。僕じゃ無理っていうなら…」

カミュは何も言わずにイレブンを押し倒した。
イレブンの気持ちをないがしろにするなんて、出来るわけがない。

「カミュさん!」
「…そんなに心配することじゃないぜ?そんなことしなくても俺らは相棒だし、恋人だ。」
「けど…。」
「そんなに心配なら、教えてやるよ。
俺らの体の相性が、どれだけイイのかっていうのをな。」

カミュはイレブンを横向きに寝かせて、片足の膝を折る。
それを自分の脚で固定しながら、オイルをたっぷり手に取った。

「使うとこ、解すからな。」

イレブンの目の前でぬるぬるとオイルを温める。
さっき舐めていた指が、オイルでドロドロになっているのを見てイレブンは恥ずかしそうに目を背けた。
カミュは構わず、温めてからゆっくりとイレブンの秘部に指を宛がう。

「ひぃい!」
「ちょっとの我慢だぜ?最初は冷たいかもしんねぇけど。」

まだ温まり切っていなかったオイルの生ぬるさに体が跳ねたが、
温かい指にゆっくりと塗りたくられて、緊張がほどけていく。

「あ、あ…ほんとうに、そこに…」
「ああ。」
「指、はいるんですか…?」
「当然だろ?お前の尻は覚えてると思うぜ?俺の指をな。」

指先がぬぷっと入った。

「ひゃん!」
「ゆっくり入れるからな。」

ゆっくりとゆっくりと侵入してくる。
さらに大きく開くよう、優しくマッサージをしながら円を書くように解し始める。


ぬちゃぬちゃという音だけが暫く部屋に響いていたが、指が2本、3本と入るようになると、イレブンの息が荒くなり始めた。

「はぁ…はぁ…」
「どうした?」
「おしりって…触られると、こんなに気持ちが良いんですね…」
「だろ?」
「カミュさんの指が、きもちがいいところを、いっぱい掠めて…おかしくなっちゃいそうです。」
「もっと気持ちよくしてやるからな。」

じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ

「ひゃああ!」
秘部がぐっと締まる。腰が揺れる。

「どうだ?」
「はぁ、はぁ、すごい…カミュさんの指、すごく、きもちがイイ…あたまがおかしくなりそう…」
「なっとけ。」

カミュはそれから、しこたまイレブンを啼かせた。
いつも以上に抑えが利かないイレブンは、目覚めさせられた性感帯に一頻り喘いだ。

「はぁはぁはぁ」
「イイだろ?」
「はい…。」
「けどな、イレブン曰く、雄をぶち込まれてる方が気持ちがイイらしいぜ?」
「オス…カミュさんの、硬いペニスのことですか…?」
「そ。お前のしこってくれたのと、今の可愛い喘ぎ声で、最高にギンギンだぜ?」

そろそろ大丈夫だろう、とカミュは指を引き抜き、イレブンを仰向けに寝転がす。

「一つになろうぜ?」

膝を抱え、秘部を晒す。
くっぽりと穴があき、オイルがとろりと溢れていた。

「カミュさん…!」
「物欲しそうにしてやがる…いまから、熱いの入れてやるからな。」

カミュは自分のペニスを握り、秘部にグリグリと押し付ける。
「んッ!」
イレブンが何とも言えない声を漏らすのを聞きながら、ぐぷぐぷと刺激して、押し込んだ。

ぬぷんッ

「ひゃああ!」
「お前がしゃぶってた亀頭が入ったぜ?」
「かたい!」
「自分で硬くしたんだろ。」
「あ、あんなにおっきいいのが、入っちゃうなんて…」
「もっと奥まで入れるからな。」

ずぶんッ

「わああああ!」
「色気のねぇ声出しやがって。」
「あ、あ…だって…びっくりして…」
「お前の口に入りきらなかったやつ、今半分くらい入ってるぜ?」
「まだ半分!?」
「残りも全部お前の中に入れるからな。」

ずぶ ずぶ

「んッ、んっ」

ずんッ

「あ…」

奥へ押し込み、ここまで入ったと言わんばかりに奥をぐりぐりと擦るようにすれば、
イレブンは声も上げずに頭をふって身悶えた。

「はぁ…はぁ…」
「苦しいか?」
「いえ…うれしいです…。」

少し眉をひそめながら、しかし微笑む。

「カミュさんの、僕の中に全部はいって…全部、受け止められたって感じて…」
「イレブン…。」
「不安だったんです…カミュさんのそばにいたいのに…カミュさんが求めてくれるものが、なくなっちゃったんじゃないかって…だから、こうして、つながれて、すごく…うれしい…」

どんな顔をすればいいのか解らなくて、カミュはそっとキスをした。

「無駄な心配させてたな…お前の記憶がどうなろうが、俺の気持ちはかわんねぇよ。例え、俺の記憶がなくなったとしても、な。」
「カミュさん…」
「だから、そんなことは心配しなくていいんだぜ?他にもっと心配することがあるだろ?」
「え…?」

カミュは奥を強く一突きし、不敵に笑う。

「あうっ!」
「前にセックスした記憶もねぇのに、これからガンガン啼かされるんだぜ?」
「あんッ、カミュさん…!」
「それと、忘れてるだろうから言っておいてやるな。お前のイイとこは全部把握してる。」

どちゅんッ

「やんッ!か、かみゅさん!」
「俺が飽きるまで啼かせてやるぜ。」

カミュはイレブンの両手首を、白い腰腰を挟む様に拘束して、腰をガンガンと振った。

「やああああん!」
「イイ声出しやがって。啼き方覚えてんじゃねぇか。」
「あんッ!やんっ!」

バコバコバコバコ

「あッ、あっ、あっ、あっ、」

イレブンの嬌声が律動に合わせて漏れる。
多少苦しいのか目から涙があふれるので、全部舐めとった。
至近距離で見つめ合いながら、腰を激しくふる。

奥のイイ場所をごりごりと刺激すると、より高い声が漏れた。
「やあああんッ!ああんッ!」
「ここイイだろ?」
「あッ!だめッだめ!」
「どうした?」
「きもちぃのッ!あたま、おかしくなっちゃうっ!」

秘部がぎゅっと締まったのを感じて、腰を止める。

「かみゅさんッ!」
「寸止め気持ちイイだろ?」
「あ、あぁ、はぁ」

胸が盛んに上下している。
繋がっている中がすこし弛緩した。

「イきたいだろ?頭の中が真っ白になって、最高に気持ちがイイんだぜ?」
「あ…もう、こんなにきもちイイのに、もっと、きもちよく、なっちゃうんですか…?」
「ああ。とびっきりな。」

じゅぱじゅぱじゅぱじゅぱ

「ひゃあああん!やあぁん!」
「イイ声出てるぜ?もっと声だせよ、声出してる方が感度あがるぜ?」

どちゅどちゅどちゅどちゅ

カミュはイレブンの奥を突き続ける。
記憶がないとはいえ、体はカミュを覚えている。
愛する人の硬い性器を中で感じて、イレブンの体は何時もの通り、雌になっていく。


「かみゅさん…いきたいです…」
「イかせてください、って言ってみ?」
「いかせてください…」
「もっと。」
「イかせてくださいッ!」
「男のモノでイっちまうんだろ?」
「あ、あッ…いっちゃう…イっちゃいますッ…!」

ばちゅばちゅばちゅばちゅ

「やぁあああんんッ!あ、あああんッ!イっちゃうううう!」

イレブンは腰を押さえつけられ、熱いモノで突き上げられながらも、体を揺らし、捩じらせながら何時ものように妖艶に喘ぎ続けている。
悶えるのが気持ちよくて、カミュははぁはぁと息荒く、腰を振り続ける。

「イレブン…イレブン…」
「あ、あッ、かみゅさんッ、かみゅ、さんッ!」
「イってくれよ…俺の、目の前で…!」
「かみゅさんッ、かみゅ、かみゅッうッ!!」

白い指がシーツを掴み、背を反らせてビクビク震える。

ぎちぎちの秘部を激しく突き上げる。

「ひゃああああ!イっくッ!いく、いくいくッ!ああああ!!!」


根本から絞り出すように、ぐっと力が入った。

「ッ!」

キツさに少し顔がゆがんだが、カミュはイレブンを見つめながら、奥へと吐精した。

びゅるるるるッと注がれた熱に、「あん、あんっ」とイレブンが小さく声を漏らした。

「はぁ…はぁ…」
「はぁ、どうだった?」
「あ…はぁ、きもちいいです…まだ、からだのなか、きゅんきゅんしてます…」

カミュは再度強く突きあげた。

「ひゃん!」
「一発で終わりなんて思ってねぇだろうな?」
「え!?」
「言っただろ?俺が飽きるまでイかせるってよ?」

どちゅんッ

「やあんっ!か、カミュさん!」
「まだまだ啼いてくれよ?イレブン。」


再び腰を強く振り始めた。


今まで通りの反応をするイレブンの体に安堵して、
受け止めてくれている白い体に、まだ浸っていたかった。

それに、イレブンの感度は相変わらずいい。
前のような関係に戻れる、白い体と繋がっていると、そう思えたから。


カミュはその夜、たっぷりと、恋人を抱いた。










空が白み帯びてきた頃、カミュは目を覚ます。
隣で寝ている恋人の髪にそっと触れた。

「おはようございます、カミュさん。」

水色の目が開かれて、小さな口がそう告げた。

「エッチしたら思い出すかも」というイレブンの台詞が頭の隅にあったので、
少しばかり期待していたのだが、そんなことはなかったらしい。

「おはよう、イレブン。」

何時ものように額にキスしてやると、くすぐったそうに、幸せそうに笑う。
思い出が無くなってしまったのなら、もう一度作り直せばいい。
カミュの心はすっかり前向きになっていた。

2人、朝の支度を終えて、朝食へ向かった。
仲間たちはもう起きていて、明るく迎えてくれた。
シルビアが心配そうな視線を寄越してきたので、そっとイレブンの腰に触れてみせると、乙女は口元を綻ばせた。

朝食でもイレブンはシチューを選んだ。
何がどうしてそんなに好きなのか解らないが、イレブンの変わらないところに今はほっとする。

「今日の予定立てましょ?」
「そうね…」
「実戦に出たいです。」

イレブンがきっぱり言った。

「だが、大丈夫なのか?」
「大丈夫です!…たぶん。」
「まぁ、弱そうなやつ見つけて少し訓練してもいいんじゃねぇか?」

カミュは賛同した。何時も大体そんな感じだ。
イレブンが意見をしたら、余程危険出ない限り肯定するのがカミュの仕事だ。

「そうね。何かしてた方が気がまぎれるものよね。」

結果、ソルティコから、弱そうな敵を求めナプガーナ密林へと出かけることになった。
食事をおえ支払いを済ませてから、荷物を取りに一度部屋へ戻ろうと階段を上り始めたその時だ。
さっきまで座っていた男が突如立ち上がり走り出した。

「だれかとめて!食い逃げよ!」
「ふぇ!?」

店員の叫ぶ声にイレブンが驚き、階段を踏み外した。

そして、落ちた。

ざわめいた食堂の中、ゴン、と頭を打った音が聞こえた。


「イレブううううん!!」
「きゃああああ!」
「イレブン様!ホイミ!ホイミ!」

セーニャがあわてて回復を唱える一方、マルティナがイレブンを驚かせる原因を作った、食い逃げ男を猛然と追った。
すぐそこで男の叫び声が聞こえたので、たぶん捕まったと思われる。形が残っていればいいのだが。

「イレブン!」
残りの仲間は即座にイレブンに駆け寄り、一同で見守る。

「いたた…びっくりした…。」

昨日の今日だ、本当に大丈夫だろうか。

「イレブン…大丈夫か?」
カミュは、イレブンが体を起すのを手伝う。

「えへへ、ごめん、ビックリして落ちちゃった。ありがとうカミュ。」

ん?

一同は顔を見合わせる。

「イレブンちゃん?」
「シルビアさん?ロウじいちゃん…?みんな、どうしたの驚いて。…みんな?」

イレブンは自分の発言に自分で首を傾げた。そして目を見開いて飛びあがった。

「わああああ!!ごめんねみんな!」
「思い出したのか!?」
「うん!っていうか、なんで忘れてたんだろう、こんなに大事なみんなのことを!」

荒療治だったが、とりあえずイレブンの記憶が戻ったらしい。
壁に激突してふっとんだ記憶が、食堂の床で戻ってくるなんてことがあるのだろうか。
兎に角、食い逃げ犯を捕まえたマルティナも戻ってきて、仲間で喜びあう。

「よかったの、これで旅も再開じゃな。」
「うん!魔竜のたましい集めないと!」
「…記憶は完全復旧だな。安心しろよ、今度はぜってぇ俺がお前の背後守ってやるからな。」
「うん、ありがとう、カミュ。」
「じゃあ気を取り直して、無理しない程度に行きましょ?荷物を持って集合ね。」

仲間たちは各々の部屋へ戻る。
カミュと共に部屋に戻ったイレブンは、2人きりに戻ってから、そっとカミュの背中に抱き着いた。

「ごめんね、カミュ。大事な君のこと忘れて。」
「…気にすんなよ。」
「…気になるよ。…忘れられるの、寂しいって、知ってるから。」
「ん?」
「なんでもない。」

イレブンは寂しそうな顔を誤魔化すように、荷物をまとめて背負う。カミュも肩に荷物を掛けた。

「さ、行こう!」
「ああ。」

部屋を出るときに、イレブンがドアの前でふと立ち止まった。
そして拗ねたような口調で言うのだ。

「そういえば…カミュって、記憶がない僕ともエッチしちゃうんだね。」

「え!?あ、そ、それは、お前が間接的にさそって」
「ほんと、君って変態だよね。僕のことみて、エッチすることばっかり考えてるんだ?」
「あのなぁ。」
「まぁ…記憶のない僕のこと抱いてくれたの、嬉しかったけどね。」
「え?」

イレブンは恥ずかしそうに微笑んでから、背を向けドアを開けた。

「後二週間はお預けだから。余韻に浸ってて?」
「…マジかよ。」

足取り軽く部屋を出ていく姿を見て、小さく呟いた。

記憶のないイレブンもそれはそれで可愛かったが。

「その、ちょっと、素直じゃないお前が、やっぱり一番だな。」


カミュも部屋を出る。
今度こそ守ると誓ったその背中を追った。





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