『人体の小宇宙』
初出:ベッター/2017-12-16

少しだけ書き直した。さすがにひどすぎた。



男はまるで“役者”だ。



「イレブン。」

その日は珍しく神妙な顔をしていた。

「どうしたの?」
「やばいかもしれねぇ。」

隣に座ってきた恋人の顔を見つめる。

「いいか、落ち着いて聞いてほしい。」
「うん。」

イレブンは、落ち着くべきは君の方じゃないかとか思ったが黙っていた。

「今日、古代図書館に行って来たわけだが。」
「うん。」
「いや、普通に星の関係の本を探してたハズなんだ。」
「うん。」
「けど、途中に『人体の小宇宙』っていう本があってな?」
「じんたいのこすも?」
「ああ。何だろうと思って中を見たんだ。」
「カミュは結構知的好奇心あるよね。」
「まぁな。って、それはいいんだ、つーかお前にも関係する大事なことが書いてあった。」

真面目に言うので、真面目に聞いた。

「男でも妊娠する可能性があるって。」

「は?」

イレブンは小ばかにした声を出した。

「意味解らないよ。誤植じゃないの?」
「何度も確認した。やばいぜイレブン。本曰く、200年に1人は居るらしいぜ?」
それでもイレブンは眉を顰める。
「そ、その200年に一人ってどういう規模?」
「大体200年は6世代くらいか。よくわかんねぇけど、今の人口の6倍分の1ってことか?」
「じゃ、じゃあ大丈夫だよ。っていうか本当かどうかも解らないし。」

ヘラヘラと笑うイレブンの左手を真剣な顔でつかんだ。

「お前、数百年とかいうレベルじゃねぇ選ばれし者だからな?」

そうは言われてもイレブンとしては困る。
「それとこれとは違うよ。」
「いや、フツーに全部乗せかもしれねぇんだぜ?」
「全部乗せ?」

カミュは指折り数える。

「勇者の生まれ変わりで、俺の相棒で、亡国の王子で、女顔、美髪、美肌、美脚、淫乱、名器、雌イキ基本装備で、喘ぎ声エロいとか。」
「なんか色々わかんないのも混ざってたけど。っていうか殆ど意味わかんないです。」
「とにかくだ、お前は全てがアリな存在なのかもしれない。となると、ありうるぜ?」

イレブンは未だに理解できていないが、カミュの顔がやたら真剣で真面目な気持ちになってくる。

「つまり、どういうこと…僕が君の子を産むってこと?」
「…本当かどうかわからないぜ?けど、ゼロじゃないってことだ。」

イレブンは今までのことを思い出す。
一体何夜この恋人に妊娠の可能性がある行為をされたのだろうか、と。
一晩一回で足りるわけのない恋人にがっつかれた回数なんか思い出せるわけもなく。

「で、でもさ?それだったらとっくに出来ちゃってるよね?」
「それが、だ。どうにも、男で妊娠するヤツは、産めるようになる年齢が女より上らしい。」
「…これから産めるようになるってこと?」
「かも。」
信じがたい。だが、もしそれが本当だったら…?

「(カミュと、僕のこども…?)」

イレブンの下腹部がきゅんっと締まった。それに気付いてビクリとする。

「(やばいよ、僕何考えてんだろ。っていうか今どこが反応したんだろう。)」
「大丈夫か?」
「う、うん。君があんまりにも真剣だからちょっと面食らっただけ。」

カミュはイレブンの腹を摩りながら言う。

「まぁ、何がどうだろうが、イレブンを大事に思うのは変わらないぜ?」

チュっとキスをして動揺させてしまった恋人をなだめる。
イレブンもそれを甘受して、今度は舌をたっぷり絡めるキスを求める。
そしてたっぷり与えられる。

お互いの体が火照ってきて、唇だけでは足りなくなる。
ゆっくりベッドに押し倒す。
久しぶりだから少し恥ずかしいけれど、触れる指の暖かさに何となく心が落ち着く。ベッドに縫い付けられるようにキスをされていれば、さっきのことも少し意識から落ちていく。

イレブンは当然妊娠説には懐疑的だ。だが、心のどこかではそれを信じている部分がある。何と言っても古代図書館の所蔵されている本だ。古の知識が詰まっているあの知の貯蔵庫に、常軌を逸した実話があってもおかしくない。1%ほどは疑いを捨てられていない。

「(大丈夫、そんなのおかしいもん。)」
「イレブン?」
「ん?」
「恋人を前に、気を散らすなんて良い度胸じゃねぇか?」
「気を散らす隙を作ったのは君の方だよ?」
「口減らずめ。」

チュッとキスをされて、相手を見つめる。

「…脱がしていい?」
「…脱がすだけ?」

意地悪に問うと、カミュは頭を掻いて、訂正する。

「…抱いて良い?」
「いいよ。」

カミュは改めて服に手をかけた。

相変わらずの何枚も重ねて着ているのを脱がせば、寒そうに見えるほどの白い肌が現れる。艶やかで、仄暗い中でも浮かぶような白さだ。
恥ずかしそうにカミュに背を向ける仕草も大概可愛くて、白い紙にインクを垂らすように、白い背中にキスを落とした。

カミュも服を脱ぎ捨てる。
旅を続ける体は、昔より少したくましくなったかもしれない。
イレブンはその腹筋を白い指でなぞり、胸を経て、顔へと手を伸ばす。引き寄せるようにキスをして、改めてその体を差し出した。

カミュがそっと指を伸ばすと、赤い舌をちらつかせながらそれにしゃぶりつく。ねっとりと舌を絡ませて、これからなすことを暗示するようにたっぷり愛撫する。
「んっ…」
ぷちゅりと口を離すと、銀の糸が2人をつなぐ。

「お前の中、熱いな。」
「カミュも熱い?」
「熱い。」

唇に齧り付き、たっぷりと舌を絡ませて、互いの熱を確認する。
「中、触るぜ?」
「うん。」

カミュがオイルを手にする間にイレブンは自ら枕を腰の下に置いて、入れやすい体勢を作る。健気な様に、カミュは満たされる。愛し合いたかったのは、自分だけじゃないと思える。
「今日は流石に、ちゃんと温めるから。」
「ありがとう。」

慣れた手つきでオイルを馴染ませていく。悔しいけれど気持ちがいい。
「ねぇ…」
「どうした?」

イレブンの中では1%の可能性がまだ揺れている。
けれど、それを口にするとカミュに申し訳ない気がして黙っていた。
彼がその情報を知ってからどんな気持ちでここへやって来たのかと考えれば、きっと彼だって、自分と同じように疑いを捨てきれない思いがあるに違いないと思ったからだ。
だから、一緒に「そんなわけがない」と、否定するべきだと思っていた。

「…久しぶりだから、優しくしてね。」

少し弱気な笑みだったけれどカミュはにっこり笑って、当たり前だろ?と答えた。
イレブンはカミュの指を感じて目を瞑り声を殺した。

久しぶりの恋人の指が、秘部をぬっちゃぬっちゃと刺激する。
本来、行為そのものよりもその前や後の2人で肌を寄せ合って他愛ない話をしている方が好きなイレブンも、久しぶりの再会だったからカミュに身を委ねていた。

「解れてきた?」
「ん…わかんない…」
「指3本にするぜ?」

五指の内中央の3本を入れられて、そっと中のポイントを探られる。
「ッう…」
相変わらず弱点のままらしい。体をピクンと震わせて息を荒くする。
「指だけ、やだ…。」
「解ってる。イかせたりはしねぇから。」

キスをされながら、ぬたぬたと内側が溶けていく。
優しく内側を撫でる指はイレブンの中に愛撫されるようでもある。

「っ…ん…」
小さく息を漏らしながら、優しい快感を味わう。

「むりやりはやだよ…?」
「解ってるって。けど、多少気持ちよくなってねぇと、入れられるのきついだろ?」

入れられる予定のモノをチラリと見て顔を赤く染める。
久しぶりに見たカミュの雄は、何だか記憶のそれよりも猛々しく見えて、指3本で解されても、効果が薄い気さえしてくる。

「(…あの…カミュのが…奥で…。いっぱい、だしちゃうんだ…。)」

どういうメカニズムなのか、イレブンはよく知らないが、
男女が交わって、その際男が熱を放つから子どもが生まれるらしい、ということは知っている。
ということは、もし、男で妊娠する場合があったとしたら、やっぱりそういうことなのだろうか。
イレブンの中に入るのを待っているカミュのソレが、イレブンの奥で熱を放てば、その可能性がある、ということだろうか。

イレブンの中がピクリとする。

「(わわわ…どうしよう…。)」

どんなにカミュから卑猥な単語を浴びせられても、こんな風に体が反応したことはなかった。
こんなことになっている原因は、単純に変な話をされて妙に意識をしてしまったからなのか、
或いは、
そういう機能が、中で目覚めようとしているからなのか。

「(まさか、ないよ。ないない、ありえないって。)」
「イレブン?」
「う、うん?」
「…本当に、大丈夫か?」
「大丈夫だって。…久しぶりで…カミュの指、気持ちがいいなって。」
「そういうこと言うの珍しいな。欲しがってくれてるってことだよな?」
「だって、…僕の一番大好きな君で、僕の唯一の恋人だから。」

健気な事を言ってくれる恋人が本当に愛おしくて、カミュは優しく何度もキスをしてやる。イレブンも、自分の頭の中にあることを忘れ去るようにたっぷり、じっくり、そのキスを味わう。

「…入れても大丈夫か?」
「うん。ゆっくりいれてね。」
「解ってる。綺麗な…大事なお前の体だからな、傷つけたりしねぇよ。」

イレブンはカミュが入れやすいように姿勢を崩す。
カミュはイレブンの、すっかりほぐれた秘部に亀頭をぐりぐりと押し当てる。
「顔見ながら挿入していい?」
「うん…いいよ。」
「目、逸らすなよ。」

普段は恥ずかしさと気持ちよさに目を強く瞑ってしまうので、イレブンは無意識にそうならないよう、カミュの青い目を見つめる。青い目も自分を見つめていて体が熱くなっていく。

ぬぷッ。

「ッあ…。」
力まないよう呼吸を止めないように気を付ける。
ずぷ、ずぷ、とカミュの熱い雄が中に入り込んでくる。言いつけを守って目を見つめ続けていたが、声が漏れると恥ずかしくて堪らなかった。

「あぁ…ッ…。」
「イレブン…全部、入れるからな。」

うん、と返事をする余裕はなく、腰を掴まれて、ぐッと突き上げられた。
「あんっ!!」

お互いの体が求めあうようにぴったりとはまる。イレブンの体はその熱を求めてぎゅうぎゅうと締め付けていた。

「はぁ、はぁ…すごいぜ、中。すげぇ気持ちイイ。」
「かみゅの…あつくて、すごい…。それにすごく、かたくて…。」
「可愛い口でそういうこと言われると、すげぇ興奮するから止めろ。」

チュッチュと戒めるようにキスをされるのが気持ちが良かった。
子どもが出来るとか、そんなことはもうこれっぽっちも頭になかった。

「かみゅ、いっぱい、きもちよくなってね。」
「お前もな。…腰、振るからな。」

イレブンがコクリと頷いたのを見て、カミュはゆっくりと律動を始めた。
何時もより念入りに馴染ませたオイルが、すでにぬっぷぬっぷと音を立てている。

ぬちゃ、ぬちゃ…

「っはぁ…かみゅ…。」

ピッタリと咥えこんだ秘部を出入りする熱い棒に、イレブンは身を捩りたいほどの快感を覚える。出ていく時の感覚、押し込まれる時の熱、どちらともに体を震わせた。

ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぬっちゃ、ぬっちゃ

「かみゅ…かみゅ…。」

どちゅ、どちゅ、どちゅ、どちゅ

「あッ…あッ…」
「イレブン…すごいぜ、絡みついてきて、やべぇ気持ちイイ…!」

じゅっぷ、じゅっぷ、じゅっぷ、じゅっぷ

「はああぁッ…かみゅッ!!」
「先走りすげぇ出てる。お前の中ぐっちゃぐっちゃだ…熱くて、とけそうだ。」

激しくなる動きにイレブンは小さく喘ぎ声を上げ続けていた。
時折与えられるキスに心を溶かされる。中に与えられるカミュの熱で体が溶けていくのを感じる。

「かみゅ…だして…。」
「好きなとこで出していいか?」
「いいよ…。」

奥で出すと始末が厄介というので、中々奥で出させてくれないのだが、今日は許されているらしい。
カミュは、普段は負担をかけまいと自らに禁じていた奥の奥を突いた。

ごちゅん

「っああああ!!」

抑え気味だった声が激しく喘いだ。
それはカミュの支配欲を刺激した。

「イイ声…もっと聞かせてくれよ。」
「かみゅ…。」
「お前の声、好きだ。」

好きと言えば許されるものではないと解っているが、それでもカミュはその声が聴きたくて、久しぶりの熱の全てをその最奥へ注ぎ込もうと激しく突き上げた。

「やぁあああッ!あぁああ!!」

腰を掴んで激しく抽挿を繰り返す。
イレブンは頭を振りながら快感の波に耐えていたのだが。


ごりゅッ

「!!!!」

かつてない感覚に襲われて、目を見開いた。
「ッあ!!」

思考の一部だけが冷静に状況を考えている。
今の感覚はなんだろうか、と。

カミュが控えてくれていたとはいえ、今までこの奥をゴツゴツ刺激されたことはゼロではない。けれど、今の感覚に陥ったことはない。
前に交わっていた時と、何か、体に変化でも起きたのだろうか。


―男が妊娠する機能が備わるのは、女より遅い―


忘れていたはずの言葉が頭に湧いて出る。

「(だめ…これ、だめなやつかも…!!けど、そんなわけ…)」

―お前、フツー全部乗せかもしれねぇんだぜ?―

カミュに言われた言葉を思い出す。

もし、本当に全部乗せだったら?
さっき、キュンとなった場所は?

溶けていた脳がさっと冷静になった。

「だめ!かみゅ、だめぇッ!!」

気持ちがイイ中で、イレブンは精一杯の声をだした。

「かみゅ…それ、だめ、おねがいッ!」
「え?」

イレブンの半泣きの懇願に、流石に動きを止める。

「どうした?…痛いか?」
「痛くない…けど、へんなとこあたるから…」
「変なとこ?」
「ッん…」

動いていないのに体をピクピクさせる。

「だめなところだから。」

「だめ、かみゅ、だめっ!」
「けど、すげぇ中絡んでくる。気持ちいいんだろ?」
「きもちいいよ、けど、だめなの」
「なんで?」

カミュは動きを止めたままイレブンを見つめた。
イレブンは顔を真っ赤にして半泣きのまま首をぶんぶん振るだけだ。

「なんで?」

改めて問う。こんなに気持ちよさそうにしているのに、なぜ?

「ここ…きゅんってなったの。」

イレブンはカミュの手をとって、自分の腹の上を撫でさせる。

「おなか…ぴくぴくするの。」
「何時もだろ?」
「ちがうの、いつもとちがうの。」

「どうした。」

何時もと違う様子に流石に戸惑う。

「あの…」
イレブンは顔を覆った。


「あかちゃん…できちゃうかもしれないんだよ…?」


その声、その調子、全てが完璧だった。
カミュは悶えて理性が吹っ飛びそうになるのを必死に耐えた。

顔を多く手をぎゅっと握って、真っ赤な顔と見つめ合う。

「そしたら…俺の子どもを産んでくれ。」

体を摩って温めつつ言葉を探した。

「だからその…ちゃんと、養うし。俺は…親とか記憶ねぇから、いい父親になれるとは思えねぇけど…お前と子どものことはちゃんと食わせるし、守るから。」
「カミュ…。」
「俺の子ってより、お前の子ってなると、ユグノアの後継者だもんな、ちゃんと育てねぇと、お前の両親に合わせる顔がねぇな。」
「あの…。」

「俺の子、産むの、嫌か?なら、止めるぜ。」

カミュはゆっくりと自身を引き抜く。
中から熱が逃げていく。

イレブンの秘部は、彼が意識するより先にそれを締め付けた。

「やじゃない…いやじゃないよ…!けど…」
「けど?」
「っあ…はぁ…はぁ…。僕…ちゃんと、うめるか、しんぱいだから。」

きゅっと締まる。

「かみゅのあかちゃん…ちゃんとうめるかな…。」
「大丈夫だ。だから…孕めよ。」

孕むという単語に体がビクンと反応した。

「奥にいっぱい出すから、受精ししてくれ。」
「ッ、」
「俺の精子、たっぷり受け止めてくれよ。お前の奥満たしてやるから。」
「かみゅ…かみゅッ…!!」

スレスレまで抜いていた雄を最奥まで一気に突き上げた。

「ッああああ!!!」

さっきより激しく、カミュは奥をゴリゴリとせめる。
イレブンはうわ言のように名前を呼んでいて、カミュの支配欲が増していく。愛する体を滅茶苦茶にしていると思えば思うほど、止まることは出来なかった。

バチュバチュバチュバチュ
どちゅどちゅどちゅどちゅ

「やぁあああっ、あぁあんッ!!かみゅッ!かみゅっ!!」
「出すぜ…!!」

名前を呼び続ける小さな口に齧り付いて、涎をしゃぶり合うように舌をぬっとり絡ませつつ、腰をぐっと引き寄せて奥の、奥の、奥へ。


「むりっ!イっちゃう!かみゅッ!」
「イっていいぜ?ほら、気持ちがいいセックスでちゃんと受精してくれ…!」
「あん!あんっ!カミュ!カミュッ!」
「奥の、奥に、ぶっかけるからな…!」
「あ、あッ、いく、イクッ!い、いっちゃうううう!!!や、やああん!!」


びゅるるッ

「あああぁ…あぁ…。」

びゅッ びゅっ

「っあ…はぁ…イレブン…。」

自分でも驚くほどの量の精液をイレブンの中に放った。
胸を激しく上下させているのを放心してみていた。
挿したままの雄を抜くつもりは無かった。

「イレブン。」
「カミュ…。」

息が整い、意識がはっきりしてきたのを確認して、またねっとりとキスをする。

「奥、どうだ?気持ちがイイだろ?」
「ん…。」
「今日は全部奥に出すからな。」

そう言って腹を摩るとイレブンは言いたいことを察したらしく、バカバカと小声で詰ってきたが、秘部がキュンと締まったのを感じて、嫌ではなさそうだと解る。

カミュはなだめるようにキスをしつつ、再び、その奥の奥へ熱を放たんと律動を始める。

イレブンの中はカミュの出した精子と先走りでぐちゃぐちゃになり、
それが絡みついてより気持ちがいい。
奥で射精された時にイったらしく、ペニスを育てる緩慢な律動でも体をビクンビクンを跳ねさせて、
腰を振り、中をうごめく熱を舐る。

乱れたイレブンは何度見ても愛らしく、
この子を孕ませたいというオスとしての本能がカミュの中にムクムクと沸いて、
可愛い嬌声を聞きながら、精の限りをその奥に放った。


たっぷり、夜が更けた。











「おはよう。」
ぐったりと目を覚ましたイレブンの額にキスをしてやる。
「…おはよう。カミュ。」
昨夜のことを思い出すと、一言文句を言ってやりたいくらい好き放題されたのだけれど、幸せそうな恋人を見て赦してしまう。

「キス。」

求めると、好みの軽いキスをして貰える。

「調子…大丈夫か?」
「ん?勿論ダメ。」
「だよな。」

カミュさえもやり過ぎたと思って居るくらいだった。

ついでに、疚しいことが一つあった。

「あー…昨日のことなんだけどな。」
「…すごく、いっぱい出されちゃったから…きっと出来ちゃうね。」

イレブンは自分の腹をさすって、幸せそうに呟いた。
懺悔をする機会を与えてもらえない。


『人体の小宇宙』という本は、実際存在したが、
別に男が妊娠するなどということは一言も書いてなかった。
イレブンなら信じるだろうなぁと嘘をついて、赤ちゃん出来ちゃうプレイをしたかっただけだなんて、この笑顔の前で言うのは忍びない。

とはいえ、嘘をついたままというのは気が引ける。

「名前決めなきゃね。」
「あのだな、」
「双子とかかもしれないもんね。」

話す隙を与えてなるものかといわんばかりに畳みかけてくる。

カミュはハッとした。
というか、

「お前…全部お見通しって顔してるよな。」
「何が?」

愛らしいはずのイレブンの笑顔に、背筋に悪寒が走る。

「あ、あのだな。」
「ねぇ、カミュ。」
「お、おう。」
「僕を、騙せたとでも思ってた?」
「いや、その、悪」

イレブンの腕が首に絡みついてくる。
そして耳元で囁かれる。

「ギガデインとメラゾーマ…どっちがいい?」

ああ、その笑顔は、演技なのか。

この男はまるで“役者”だ。



イレブンは、寝起き一番で瀕死になっている恋人を見て、聞こえないくらい小さな声で囁いた。

「…本当は、ちょっとだけ信じてたっていうか…。」


あの時キュンっとした腹をさすりながら、
イレブンは昨夜の妄言を恥ずかしそうに思い出した。


「君の子だったら、産んでもいいかな、とか思っちゃったりして、ね。」



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