刃と鞘
初出:ベッター/2017-12-16

#第18回カミュ主版ワンドロワンライ参加作品


浴衣を羽織ったイレブンは、風呂からでて驚いた。

「か、かっこいい。」
「お?どうした?」

カミュはいつも通りに武器の手入れをしているのだが、
「片手剣でも手入れするんだね。短剣だけかと思ってた。」

片手剣も扱えるとは聞いていたのだけれども、各自の技が被らないようにすることや、カミュが短剣を気に入っていることを考えて、片手剣を装備せずにここまできたのだが。

「折角ならつかえってお前が言うから。」
「だって、折角頂いたのに。」

カミュの手にあるそれは、名刀斬鉄丸。ハリマから貰った名刀である。イレブンの勇者の剣なんかよりは少し短く、カミュくらいしか扱えないだろうと思われたので、カミュに預けてみたのだ。

「似合ってるよね、その海賊服と。」
「そうか?ああ、色合いとかってことか?」
「うん。その剣?刀っていうのかな?使い勝手はどう?」
「さすが、名刀って感じだぜ?あんなに使っても刃こぼれしてねぇ。」

刃を光に宛てながらその様子を確認している。
「俺の愛刀なんかと比べたら申し訳ねぇくらいの切れ味だ。」
「へぇ。何がそんなに違うんだろうね。」
「やっぱ素材とか、鍛え方とかか。流石にお前の剣よりは劣るけどな。」
「だってオリハルコンだし、皆の気持ちがぎゅっと詰まってるからね。」
「ま、そうだな。」

恋人が隣に座るのに抜き身のまま持っているのも憚られるので、カミュはそっと鞘に納めた。
「ねぇ、カミュは何で攻撃直前に抜刀するの?グレイグさんから、抜刀術だって聞いたけど。」
「別にどっかで習ったわけじゃねぇんだけどよ。」

鞘に納めて一度構えてみる。

「お前が魔物と戦うのとかとはちょっと違うっつーか、俺の場合、今まで戦ってきた相手が、魔物より同業者とかが多かったってのもあって、ナイフとかで切りかかられると、武器抜いてから対応っていうのが結構厳しいことが多くてな。」
「へぇ。それで早く抜けるように練習したの?」
「練習っつーか、生き残るための技術っていうか、抜きながら攻撃するなり、かわすなりしねぇと間に合わねぇからな。」
「いいよね、カッコイイと思うよ!」

素直にニコニコ笑いながら言われると照れくさい。

「僕もそういうのやってみたかったけど、勇者の剣、鞘無いんだよね。」
「そうだな。まぁ、あっても剣先の方が幅広だから抜きにくいだろうしな。」
「そうだね、引っかかりそうだね。」

イレブンが左手を鞘に、右手を剣に見立てて、それを抜刀する様をイメージしている。

カミュの好きな、白い指。
長くて、素朴な指。
あれの時は、腕をつかんだり、シーツを掴んだりする。
手を握ったりしても結構喜んでくれたりして。

そんなことが頭に蘇ってくるのは、湯上りでしっとりしているイレブンの肌がすぐそこにあるということも一因だろう。

「…。」

「カミュ、どうしたの?」
小首を傾げるのが、また、相変わらずそそる。

「その、手の動き、中々イイなって。」
「手?どこが?」

左手で右手の指を二本ほど握って、それを抜き差ししているだけだが。
カミュからしたらその動きが、あれなことを想起させるに十分だったのだ。イレブンがやっぱり首を傾げるので、冷やかしてやろうかと口にしたのだが。

「何か、」
「ストップ。」

制止される。

「今、変な事言おうとしたでしょ。」

嫌そうな、いや、どこか恥ずかしそうな顔をして文句をいう。

「変な事?」
「変なこと!」
「ってことは、お前も変なこと考えたってことでいいか?」
「え、いや、そ、そーいうんじゃないよ!君なら考えそうだなって思っただけ!」
「本当に?」

カミュは得物をテーブルに置いて、じりじりと恋人に近寄る。すでに顔は真っ赤だ。恐らく同じものが頭に浮かんでいて、最近考え方も似てきた気がして何だか嬉しい。

「だ、だから、」
「抜いたり挿したりするの、得意だぜ?」
「ぶ、武器の話でしょ…!!」
「武器とかな。」
「とか、って、ほら、やっぱりエッチなこと考えてた!」
「とかって、別に、エロいこととは限らないだろ?」
「カミュに限っては絶対それでしょ!」
「そもそもお前が示唆したんだろ。恥ずかしがり屋のお前なりのお誘いなのか?。」

太腿を鷲掴みにするとひぃっと声が漏れる。

「だめ、だめです!」
「一日に一回は、俺の“愛刀”も手入れして、鞘に納めねぇとな。」
「そ、それは鞘に入れなくていいの!」
「何で?」
「な、なんでって、鞘入れなくてもいいやつだから!」

自分のことを鞘だと認識しているのが本当に愛しくて、こうなったら感情の向くまま突き進みたい。
狼は得物を追い詰めに入る。


「へぇ。俺のが短剣だとでも?」


説得しようと必死だったイレブンは、すっかりカミュに組み敷かれていることに気が付いていない。太腿をなぞられていることも当然気づいていない。
「ち、ちがうよ!そんなことは言ってない!」
「だよな、奥まで届くもんな?短剣じゃねぇよな。」
「…短剣じゃありません…。」
「じゃあ何?」

何って言われても…と口をもごもごさせて、小さく回答した。

「…か、片手剣です…。」

両手剣ではないか、そうか、しょうがないか、とそこは諦める。

「片手剣だったら、鞘がいるよな?」
「ぼくのは鞘ないし!」
「ものによってはあるだろ。」
「う…。」

イレブンは自分にもう勝算がないことは気付いていた。しかし、じゃあどうぞ、と差し出したくもない。昨日だってしたのだから。

「もうこんな時間だし、僕、お風呂入ったばっかりだし、」
「風呂入ってからじゃなきゃ触らせてくれない癖に。俺の為に風呂入って綺麗にしてきたんだろ?」
「違います、だ、だから待って!」
「じゃあ待つ。」

カミュはイレブンの太腿を掴んだまま停止した。
待っているつもりらしい。
何を待っているのかと言えば、OKが出るのを待っているのであって、
イレブンがOKを出さない限り、きっとここで太腿を掴んだままだろう。再度説得を試みる。

「“お手入れ”、昨日もしたよね?」
「俺が毎日武器の手入れしてるのは知ってるよな?」
「…片手剣も毎日するの?」
「お前が預けてくれた斬鉄丸、毎日手入れするぜ?武器はどれもちゃんと手入れしねぇと。」
「武器は、でしょ?」
「だから、俺の“愛刀”も手入れして、鞘に納めたり、抜刀の練習しないとな。」

見下ろしてくる青い目は、爛々と輝いている。
ああ、僕は今日も狩られてしまうと、狼に白旗を上げた。

「ほんとうに…どこまでも変態だよ…。…一回だけだよ?」


「解ってる。」
解ってなさそうなくらい明るい声で言われて、イレブンは潔く脱がされた。首に、胸に噛みつかれる。舌の熱に溶けてしまいそうだ。

「簡潔に…。」
「手入れは念入りに、だろ。」

カミュは、枕元からオイルを持ち出す。
「準備がいいんだね…最初からやる気満々だったんだね。」
「ホムラの里は浴衣だからな。脱がしやすいし、チラ見でエロいし、まぁ期待はするよな。正直、毎日期待してるんだけどよ。」

しゅるる、と帯を引っこ抜かれ、その他諸々あっという間に全部脱がされた。

何だかんだ見られるのが嫌なイレブンが何気なく自分のものを隠すと、カミュはイタズラに言う。
「お前の愛刀も手入れしてやろうか?」
「…結構です。」

カミュと一緒になると決めたその時から、イレブンの愛刀が鞘に収まることはない。
自分が抜き身のまま、自分専用の剣を背負っているのは、実はそれを暗示していたんじゃないかとか、下らない考えが浮かんでは消えた。
そんな間にすっかり秘部に指攻め込んでいた。

「ッ…指だけは嫌だよ?」
「知ってる。」

指が侵入し、中を混ぜる。クチャクチャとオイルが音を立てている。
カミュの指だ。さっき武器の手入れをしていた、器用な指。そう意識するとすぐに体は許してしまう。

イレブンがチラリとカミュの様子を確認すると、相当な攻撃力がありそうなほどに猛々しく、ため息が出る。
「お願いだから…武器みたいに雑に挿さないでね?」
「そこまでバカなことしねぇよ。…もう少し解した方がいいよな。」
「もう大丈夫だよ。ゆっくり入れてくれれば。」
「それは保障する。」

イレブンは膝を抱えて受け入れる姿勢を作る。
カミュが上から乗るようにして、入口にぬぷぬぷと亀頭をこすりつけて、それからゆっくりと侵入してくる。
「ッ…はっ…。」

短剣だなんてありえない、完全に奥まで届いてしまうのだから。

「やっぱ…ぴったりだもんな。サイズとか。収まりがイイっつーか。」
「そんなこといわなくても、大丈夫だから…もう、君専用の鞘…だよ。」
「自分のこと鞘って…あんまりそういう言い方すんなよ?まぁ俺専用は嬉しいけどな。」

ぐちゅッ

「ッふ…ゆっくり…だよ?」
「出来るだけ、な。」
「はぁ…もう。」

カミュがゆっくりと腰を振り始める。
その感覚は、何度味わっても、体がビクビクと震える。
イレブンは溢れる声を漏らし始める。

「痛いか?」
「大丈夫だよ…そんなにヤワじゃないから。」

ちゅっぷ、ちゅっぷ 音が響く。

解しが足りなかったという意識があるからか、いつもより緩慢だ。

「…気持ち良すぎてやべぇな。」
「いいよ、カミュ、ちょっとくらい、はげしくしても。」

イレブンは少しだけ余裕の笑みを見せて、
「得意なんでしょ?抜刀するの。」
そう、あえて煽ってやる。

それらの意図を全て汲んだうえで、カミュはイレブンの腰をぐっと掴んだ。
「じゃ、お言葉に甘えて。」

優しすぎる恋人に熱くキスをしてから、ゆっくりと、次第に早く抽挿を繰り返す。時折止めて様子を確認する。
「っは、は…は…んぅ…。」
「イレブン…痛くねぇか?」
「っ…ふふ…大丈夫。いっぱい、きもち良くなってね。」

チュッチュと何度もキスをしてやりながら、カミュはイレブンをイかせようとイイ場所をゴリゴリ擦った。先走りだのオイルだのが、じゅぱじゅぱと卑猥な音を立てている。

「ッあああ…カミュ…そこ、つよいの、こわい。」
「気持ちイイだろ?」
「ん…ッああ…、はぁ…きもちいいよ、」
「気持ちイイの怖いのか?」
「こわい…ッあん…あぁッ…ふ、んッ、だって、ぼく、へんなこえでちゃうから…。」
「変な声、すげぇ可愛いから、一杯聞かせてくれよ。」

腰を浮かせるように掴み、ゴツゴツせめた。
イレブンは眉を顰め、顔真っ赤に染めて、シーツを掴み、背を反らす。

じゅぷじゅぷじゅぷじゅぷ

「ひゃぁああんッ!!あぁんッ、あんっ、らめ…らめぇッ!!」

回らない口で、ダメダメと零しつつ、ひときわ高い声を上げて、イった。

「ッああんッ!!!!」

ビクンと体を震わせて、涙をボロボロ零しているので、舐めとりつつキスをして宥めてやりながら、腰を振り続ける。

「あ、あ、むり、むり…イっちゃう、またいっちゃうからぁっ!!」
「一杯、気持ち良くしてやるからな…!」


ひゃあああん、と煽るように啼かれて、カミュは奥をゴリゴリせめた。イレブンが珍しく、腰を掴む手の手首の辺りを強く握ってきて、爪がたった。しかし、カミュにはそれさえ気持ちよく、イレブンの奥をばちゅん、バチュンと攻め立てる。

「らめ、かみゅ、かみゅッ!い、っちゃうゥッ!!」

「俺もイくから、一緒にイこうぜ…!」

一緒に、と言いつつイレブンをイかせる。
「やぁあんッあンッ、いくッ、イくッ…あ、あん、かみゅ…!!」
イレブンはほぼイきっぱなしだったが、特に背をぐっと反らせた。
「イレブン…!」

カミュは、出すという間もなく、
イレブンの奥にびゅんびゅんと精を放った。

放たれた熱の熱さに体を震わせる恋人をぎゅっと抱きしめながら、息が止まるくらいに熱いキスを繰り返した。

意識が軽く飛んでいる中でも、見つめ合って2人笑い合って、崩れ落た。








「…手入れ…おわった?」
「…終わりました。“鞘”の手入れもな。」
「解ってるよ。…腰は痛いけど。でも、ごめん、僕も君の手首、爪でぎゅうぎゅうしちゃったかも。」
「気にすんなよ。」

手首の爪痕を確認してみる。痣というほどではないようだが、切り傷のように残っている。カミュはそれにキスをしてみせた。案の定イレブンは顔を真っ赤にする。
「ばか。」
文句を言いつつ寄り添ってくるので引き寄せて、キスをしてやりつつ腰を摩った。

「…流石に悪かった。」
「何で?」
「お前、2日連続とか嫌だろ。」
「うん。…けど、今日は赦してあげるよ。」
「何で?」

「だって…斬鉄丸の手入れしてるカミュ、かっこよかったから。」

それだけ言って恥ずかしそうに胸に顔を埋めて寝てしまった。
手入れの際の“かっこいい”は、自分にあてられた言葉だったのかと今更気づいて何となく気恥ずかしいくなる。

そのまま、カミュも優しい熱を抱きしめながら眠りについた。






翌朝。


「あら、カミュ様、手首如何されました?」
「ああ、これか。」

嘘じゃないだろう。

「武器の手入れでちょっと。」














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